再会した幼なじみが男としてとんでもなく成長していたようです | ナノ

「よう、久し振りだな!」
「…えっと、どちら様で?」

 俺の口から出た言葉は、間違いなく本心だった。

「はぁ? つれねえな、そりゃ随分会ってなかったけど俺の顔忘れたのかよ」
「え、マジ誰? 初対面じゃなくて? えっ?」
「元親だよ、小さい頃よく一緒に遊んだろ」
「元親…もとちか…小さい頃…うええええぇ!?」



 確かに今でこそふらふらしている俺は、幼少の頃に遊んだ友達の記憶はある。が、それも姫若子と言われるぐらい見目麗しく少女にしか見えない可愛かった少年の話だ。
 声はまあ、成長には逆らえないからそこは仕方ないとしてだ。こんなナリにガサツな喋り方の男が同一人物だと誰が信じようか。


「おっ、思い出したか」
「ハアァ!?元親!? 嘘だろお前なんっ…なんなのこれちょっと待って頭が」
「んな混乱すんなよ」
「するわ! はぁ!? お前昔あんな…あんなにかわいかったのに…! なんだ、グレたのか? 悩みとかあるのか?」
「お前ちょっと落ち着け」



 混乱する俺に呆れたように息を吐く元親にあの頃の面影は、ない。昔は俺の名前を呼んで後ろからついて来てたというのに…!
 ちょっとこれ俺のせいだったらどうしよう俺だってそりゃ別につらいことがあったわけじゃねーし家族も好きだけどちょっと自由に旅してみたかったんだよ。と意味のない言い訳を自分にしてみても元親がこうなってしまったことは揺るぎない事実なわけで。




「あんなに可愛かったのに…乳首出してるってどういうことだよ…」
「そこかよ」

 そこだけじゃない、そこだけじゃないけどやっぱりそこは衝撃だろ! あーもー変わっちまったもんはしょうがねえ! 俺も腹括る!
 腹括るほどのことでもねえんだがな、と言ってのける元親にいちいち言い返してたら埒があかない。切り替えの早さは大事だよ。


「お前は全然変わってねえな。すぐわかった」
「そうか?」
「まあお前のこと好きだったからな」
「ん? 俺も姿変わっても元親好きだぞ」
「…わかってねえな」

 やれやれというように首を振られて、お前今俺のこと馬鹿にしただろ、と唇を尖らせて迫ると、してねえよ、と唇を指で押される。
 俺バカだから言ってくんなきゃわかんねーよ。
 お前自分で馬鹿って言ってどうすんだよ。
 う、うるせー! 俺はいいんだよ!
 わかったわかった、と笑いながら俺の頭を撫でる元親はイケメンそのものだ。



「昔の俺は頼りなかったかもしれねえ。でも今は成長した」
「ちっちょっと待った! 頼りないなんて言ってねえぞ?」
「ああ、お前なら言わねえだろうな。…だから、今ならこういうこともできるんだぜ」

 ごく流れるような動作で顎を優しく掴まれ、俺の唇に元親のそれが重ねられた。音を立てて離れたそれに俺はポカーンとするしかなくて、元親の笑う声ではっと現実に引き戻される。


「…ふっ、なんだその間抜け面」
「はっ、はぁっ!? お前なにっ、」
「ん?もう一回してやろうか」
「いっ、いらねえよ! 大体、どういうつもり…」
「んなの、決まってんだろ。ずっと好きだったんだ」

 …マジかよ。動揺しながら言う俺に、大マジだ、とそれがどうしたとばかりに言ってのける元親。
 いや当然だろみたいな顔してるけど驚いて当たり前だからね、俺おかしくないからね。


「俺、全然知らなかっ」
「そうだろうな。まあ、今と昔は違うからよ」
「違う?」
「…今はこうやって、お前に触れることができる」
「…っ、」



 元親の手が伸びてきて、俺の頬をするりと滑る。昔とは違うごつごつしたその指先は、そのまま俺の唇へと移動し押すように触れてくる。妙な緊張に薄く開かれた俺の口の中にはもう少しで元親の指が入ってしまいそうで、心臓が高鳴る俺にニヤリと笑って元親はその指をぺろりと舐めた。
 見せ付けるように行われたその行為に、直接されたわけでもないのに俺の頬には熱が集まる。




「覚悟しとけよ? 今の俺は海賊だ。海賊はお宝が好きなんでね、すぐ奪ってやるさ」

 俺は俺のもんだ、捕まってたまるか。
 おーおーそりゃあ楽しみだなあ、と笑う元親は当然だけど俺の発言なんて気にしてないようで、くそう、と舌打ちすると元親は大きな声で笑った。
 ああ、もう俺ダメかもしんない。だって、元親がこんなに近くにいるだけで心臓が煩いんだもん。




「元親の小さい頃はこんなに可愛かったのになー」
「小さい頃のお前も可愛いけどな」

 そんなことがあってから数日。慶次が共通の友達だと知った俺たちは慶次を交えた3人でつるむことが増え、俺は若かりし頃の元親の写真を出して懐かしんでいた。が、元親はそれに驚く様子もなく、あろうことか俺の小さい頃の写真を取り出しやがったのだ。



「なんでお前持ってんだよ?!」
「そっくりそのまま返してやる」
「元親は可愛いからいいの! 俺はダメ!」
「可愛いじゃねえか、ほらコレとか」
「可愛くねえよっ!」
「んだよ煩ぇなーお前も俺の写真持ってていいから俺も持っとく。それでいいだろ」
「よくねえよ!」


 ぎゃあぎゃあ言って写真奪い返そうとするものの、そういやこんなのもあったなー、と余裕で写真を次々と取り出してみせる元親には勝てそうにもない。恋だねえ、と呟く慶次の声が聞こえた。





fin.

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -