咳における恋愛作用についての結果的言論 | ナノ

「んっ、うっ、ごほっ」
「酷い咳だな。大丈夫か?」
「げほっ…あー苦しい…ありがとなかすが」
「ほら、飲め」


 結論から言おう。俺はまず、風邪を引いた。それはもう治ったのだが、咳はなかなかおさまってくれないようで、ここ最近ずっとこんな調子だ。別に咳以外に目立った症状はこれといってないのだが、咳き込むあまり吐きそうになると心配されるのも当然で、水を差し出してくれるかすがの優しさが身にしみる。



「ぐあいはどうですか?」
「ああ、謙信。まずまず、かな、げほっ」
「…ふむ。ねつはないようですね」
「…あー、まあ咳だけだから…」


 部屋に入ってきた謙信に額を合わされ、かすがに羨望の眼差しで見つめられる。…一応俺病人なんだけどなー、なんて思わず目を逸らしながら咳払いをひとつすると、だいじにするのですよ、と謙信はかすがの名を呼び出て行った。名前を呼ばれたかすがは、俺に目もくれず顔を輝かせて謙信について行った。
 いやいいんだけどね、一応心配してくれたわけだし。睨まれるよりマシだよ…。
 静かになったわけだし横にでもなって軽く休憩するか、とでも思ったのだけど。



「大丈夫かい!?」
「…病人を労る心がないのか、お前は」

スパーン! と音を立てて勢いよく開かれた扉と共に姿を現したのは慶次で、一番煩い奴が来やがった、と頭を抱える。何に勘違いしたのか、気分が悪くなったのか? と俺の肩を掴みぐわんぐわんと身体を揺らしてきやがったので、咄嗟の思いで慶次の頭を殴った。




「いってー…看病してやろうと思ったのに」
「お前に何かされたほうが悪化するわ…!」

 心配したんじゃないかー! とすぐさま飛んでくる抗議の声を軽く受け流す。咳だけだから大したことねーよ、と告げるとそうなのかい? と驚いた慶次に、喋るのも面倒でただ頷く。



「なーんだ、心配しちゃったじゃないか!」
「ぐっ!? おまっ、げほっ、ごほっ」


 あろうことか、慶次は俺の背中を強く叩きやがった。おかげで激しく咳き込んだ俺は、涙目になりながら慶次を見る。
 再び殴ろうと突き出した拳はあっさり慶次に受け止められ、暴力的だなあ、と笑う慶次に本気で殺意がわいた。しかし咳で体力を消耗した俺にはもう殴る力すら残っていなさそうだ、手を出したところでまた止められそうだし。



「大丈夫だって、こんぐらいで死にゃーしないから!」
「お前なんかに殺されてたまるか。死んででもお前を殺しに来てやる」
「おーこわっ。ね、咳治ったらキスしていい?」
「…お前が咳き込めばよかったのに」




 でもダメとは言わねえんだろ?と笑う慶次に、咳が直ったら真っ先に噛み付いてやると俺は心に誓った。





fin.

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