犬も惚れれば賭けに勝てぬ | ナノ
「あんたのこと好きになりました! 俺が賭けに勝ったら付き合ってください!」
「…ん?」
見ず知らずで目を引く髪色の元気そうな男に声を掛けられたのは、幸いにも他人がいない場所だった。
「…えーっと、さ。誰?」
「あっ、俺、左近! 島左近って言います! 左近って呼んでくださいっ」
「島くんな。それで―」
「左近!」
「…左近くん。これでいいのか?」
「はいっ!」
どうしよう、下の名前読んだだけでとても瞳を輝かせて笑ったぞこの子。
なんか既視感あるな…あ、思い出した。親戚の家にいた犬が、おもちゃ持った時にする表情にそっくりだわ。
親戚っつっても何してるかわかんねえし、聞いたところで公務員としか答えてくれなかったけど。元気してるかなジョン、久々に会いたくなってきたぜ。
…まあ、それは今はいいとして、だ。
「左近くん、は、ぼくのこと知ってるのか?」
「はいっ! 三成様からそれはもう!」
「ああ、三成か―…さま?」
「はい! 三成様は命に代えてもお守りします!」
「…忠誠心があるのは、いいことなんじゃねえかな」
戦国時代ならともかく、今は平和な現代だからそこまで犠牲になる必要性は感じねえけど。
ていうか、三成なら誰かに守ってもらわなくともひとりで片付けられるぜ、あいつ。間違いなく。
それは幼馴染みであるぼくが一番知っているし、半兵衛先輩と秀吉先輩に出会って三成はだいぶ丸くなったが―それこそぼく以外友達がいないんじゃないのか、とコミュ障を疑うほどの三成は釘バッドなんて生易しいものでもなければ、出刃包丁で済むものでもない。スピード性のある拷問器具みたいに尖りきっていた。
いや、何が言いたいかっていうとこんな三成を慕ってくれる後輩に恵まれたのはいいことだ。幼馴染みとして、素直にぼくも嬉しい。
「それで? なんでよく知りもしないぼくのことを、自信を持って好きだと言える?」
「三成様から話聞いて、いつも気になってて! で、この前偶然見かけて、落とされました!」
「それ、気の迷いってやつじゃ―」
「一目惚れっす!」
よく笑う子だ。それに皮肉が通じていないと感じるのは、わざとなのかそれとも天然か。どちらにしろ厄介なことには違いなかったが、この笑顔を見るとそんな気も吹き飛びそうになるほど魅力があるんだろう。元気があって、しかも男前と来てる。
そんな彼に言い寄られて悪い気はしねえと思う。もしぼくが男でなければ、の話だが。
「履き違えてるってことはねえの? 好きの意味を」
「ないっす! それだけは絶対に!」
「…賭けだっけ? どんな賭けすんの」
「いいんですか!?」
「しなくていいならさよならだな」
「ああっ、うそ! したい! お願いします!」
「ん。何回勝負?」
「とりあえず一回で! この賽使うんすけど―」
世間一般的にイケメンに分類される左近くんにひとつ問題があるとすれば、人の話を最後まで聞かないことだと思う。
まあ口が悪いぼくが言えた義理ではないし、そのへんは他の部分でカバーできるんだろう。
この短時間で左近くんの扱いに慣れた、と言ったら失礼か。慣れって怖い。
左近くんが出してきたのはふたつの賽で、これを転がして足した数が多かったほうが勝ちらしい。シンプルで面倒もなくいい賭けだ。
「じゃあ、先攻後攻じゃんけんしーましょっ」
「えっ、ぼく別に後攻で」
「ダメっす! ここは公平にじゃんけんで!」
「…ああ、うん。じゃあ」
もうなんでもいい、という言葉は辛うじて飲み込んだ。口に出せば話が進まなくなりそうだったし、じゃんけんぐらい減るもんじゃない。
お決まりの掛け声の後に適当にパーを出せば、左近くんは人差し指と中指を前に突き出す、つまりチョキだった。ぼくの負けだ。
よっしゃあ! とじゃんけんに勝ったぐらいで喜ぶ左近くんは大袈裟だと思ったが、本人が嬉しそうなので黙っておこうと決めたぼくは、内緒にすることも優しさだよ、と笑った半兵衛先輩の教えがしっかりと生きているらしい。
「じゃあ俺先攻で! 一発勝負っすよ!」
「ああ、うん」
「恨みっこなしっすよ! そちらさんもようござんすね?」
「どーぞ」
そちらさんも、って賭けに了承した時点でわざわざ聞くまでもないだろう。きっと言いたかっただけだな。
左近くんが気合い満々に振った賽の目は三と四、合わせて七だ。おお、なかなかだな。
左近くんが口に出した数を確認した後、その賽を拾ってぼくも振る。
さっきより遠くに転がってしまって、今いる位置では賽の目が確認できそうもない。我先にとその賽の目を見るために走って行ったのは左近くんだった。
ぼくの降った賽なんだけど。いや、別にいいんだけどな。どうでも。
「あーっ!」
「ん? 負け?」
「ろ、六と五…」
「お、勝った」
「くっ…残り物にも福があるってやつか…」
叫んだ左近くんに近付いて自分の目で確かめてみると、確かに出して十一だった。比べるまでもなくぼくの勝ち、ということになる。
それにしても、勝負ひとつでここまで落胆するものだろうか。喜怒哀楽が激しい想像はついていたが、ここまで露骨だといっそ羨ましい。
「やり直すか?」
「いやっ、一発勝負なんで! 悔しいけど俺の負けっす」
「ああ、そう」
「でも、次は負けませんから!」
「はいはい。…は? 次?」
「鍛えて出直してくるんで、待っててくださいねー!」
次があるのかよ、と聞き返す暇もなく左近くんは走って行った。
そもそも鍛えるってなんだ、運としか言えないこの勝負は鍛えてどうにかなるもんなのか。
そんなことより今日だけだと思ってた彼との勝負は、またの機会がやってくるらしい。
…もしかしたら、彼が勝つまでずっと続けなければいけないんじゃないんだろうか。別に嫌じゃないけど、明るい彼の気に当てられすぎたのだろうか。
はあ、と自然に溜め息がもれた。
「三成、犬を飼ったなら躾はちゃんとしておけよ」
「…何を寝ぼけたことを言っている? 私は犬を飼った覚えなどない」
「三成、犬を飼ったのか? 動物はいいからな!」
「黙れ家康! それに私は犬など飼っていないッ!」
「なあ、何犬だ? 写真はないのか? ワシも会いに行っていいか?」
たまたま会った三成に話しかけたところ、どこからともなく表れた家康によってその会話は断たれた。
いや、たいした話じゃなかったから別にいいんだけど。そしてここにもいたわ、人の話を聞かないイケメンが。
人の話を聞かないだけじゃなく、会話が通じない。ドッヂボールを越えてもはやバッティングマシーンだ。
おかげで三成が家康の名前を叫んで掴み掛かっているが、家康は気にした様子もなく爽やかに笑っている。たまに三成より家康のほうが怖いんじゃないか、そう思えてしまうこの光景は日常茶飯事だ。
「おや、騒がしいと思ったら勢揃いだね。どうりで」
「あ、半兵衛先輩どうも。三成ー、おーい、半兵衛先輩来てるぞー」
「…ああ、いいよ。今は家康くんとのことで忙しいみたいだから」
「ああ…秀吉先輩は?」
「秀吉は先生に呼ばれてね。先に戻っていろと言われて、たまたまここを通りかかっただけなんだけど」
半兵衛先輩は秀吉先輩といることが多いので、こうしてぼくと半兵衛先輩がゆっくり喋るのは久し振りだ。
いつもなら三成が絶対入ってくるからかな。ていうか三成まだ気付かないんだけどいいのかな。まあいいか。半兵衛先輩もいいって言ったし、なんか言われたら家康のせいにしとこう。
そう思うぼくは案外薄情だと思う。自分でも。
「そういえば、犬の話をしてたのかい?」
「三成の犬にちょっと絡まれたもんで」
「三成くんは、動物は飼っていなかったはずだけど…」
「もしかして、左近のことではないのか」
「うおっ!?」
「ああ、秀吉か。おかえり」
「うむ。驚かせてしまったか、すまぬ」
「い、いや…こちらこそすんません…」
いきなり背後から聞こえた威圧感のある声に、驚いて声を上げてしまったぼくは悪くない。たぶん。
秀吉先輩は気配もなく突然表れるので、ぼくがこんな反応をしてしまうのも初めてではない。
いつも仏頂面に見える秀吉先輩も三成たちの影響で接しているうちか、微妙な表情の変化ならわかるようになった。
他人には仏頂面に見える秀吉先輩も、ぼくを驚かせてしまった後は少し悲しそうな顔になるのだ。そのたびに三成に叱られ、いい加減慣れたらいいのに、と半兵衛先輩に笑われる。
「ああ、左近くんか。確かに犬だね」
「犬だな」
「えっ」
「ん? どうかしたかい?」
「い、いや。三成から何も聞かされてなかったもんで」
「ああ、最近だからね。三成くんが連れて来た時は珍しいとも思ったけど」
「三成も、お前を仲間外れにしたわけではない。心配するな」
いや、別に三成に言われなかったことが悲しいわけじゃないんだけど。犬イコール左近くんという共通認識にちょっと同情を覚えただけで、いや言ったのぼくだけど。なんかごめん左近くん。
優しい声を掛けてくれた秀吉先輩に軽く頭を下げてお礼を言うと、頭に優しい感覚が落ちてくる。ゆっくり顔を上げると、秀吉先輩がその大きな手で頭を撫でてくれていた。
あ、ちょっと笑ってる。
「なッ…!」
「あ、三成」
「き、きさ、貴様秀吉様に、な、ななに、なにを」
「気にするな、三成。我が好きでしているだけよ」
「ッ! そ、そうですか…」
秀吉先輩にされるがままになっていると、聞こえた悲鳴のような声は三成のものだった。
秀吉先輩が来たことで気付いたのか、こっちを悔しそうな、それでいてまた羨ましそうな目で見ていた。
不可抗力だからそんな目で見ないでくれ、三成がこっちに気付かなかったからぼくにたまたま回ってきただけだから。秀吉先輩も深い意味はないから。ていうかお前の秀吉先輩レーダーなんなんだよ怖いっつーの。
「そういえば、犬の話は左近くんのことだったみたいだよ」
「誠ですか! 貴様、紛らわしい話をすッ…いや、犬だな」
「ああ、彼のことだったのか! …柴かな? 雑種かな?」
「どうだろう? 少なくともチワワやダックスフンドといった小型犬ではないね」
「ではゴールデンレトリバーという線が…」
どうしよう、何の疑いもなく左近くんが何犬か議論されてる。左近くん、犬って切り出してごめん。とりあえず今度会ったら謝ろうとは思う。
家康は家康で、犬には会えないのか…と軽く落ち込んでるし。ちょっと可哀想だから今度ジョンのところに連れてってあげよう。
みんなが盛り上がってるうちにそっと家康に話を持ち掛けると、本当か!? と目を輝かせてぼくの手を握ってくる…のは構わないんだけどよ、その握った手を思いっきり振るんじゃない。ちぎれたらどうする。
やめろと言っているのに、すまんすまん! とぼくの背中をばしばし叩いてくる。会話の通じない馬鹿力は厄介極まりない。
「それで、何故貴様が左近のことを知っている?」
「ぼくのところに来たんだよ。ぼくの情報の出所もお前だってな」
「特別なことを話した覚えはないが」
「そのわりにはよく知ってたみたいだぜ」
「私がお前の話をすることなど今更だろう。何も不都合なことは言っていない」
何馬鹿なこと言ってるんだこいつ、みたいな顔してっけどなかなか恥ずかしいこと言ってる自覚はないのかね。ないんだろうな、この顔を見る限り。
三成と幼馴染みとは言え、クラスが離れて触れる機会は少し減っていた。家康もいるし、ぼくのことなんて薄れていたと思った。
それで構わないとも思っていたし、ぼくの中で溜まった独り善がりの感情を抑えるにはちょうどいい機会だと。それなのに、これだ。
「それで、左近がどうかしたのか」
「いや、特別なことは何もない。賭けをしただけでね」
「賭け…だと…?」
「ああ、賭けっつっても金銭は発生してないやつで―」
「左近…また懲りずに賭けなどをッ…!」
「三成、まだ話終わってねえんだけど」
「私は急用を思い出した。半兵衛様、秀吉様。すみませんがこれにて失礼します」
頭を深く下げると、三成は早足で去って行った。
…あれは、たぶん左近くんに矛先が言ったな。ぼくの周りには人の話を最後まで聞かないイケメンが多いらしい。
だからお前ら彼女出来ないのか。出来ないというより、作らないほうが正しいのか。
三成は興味ないし、家康は告白されてることに気付かずに軽々しく好きと返してある意味残酷だ。半兵衛先輩は上手く断るあたりさすがで、その辺は三成にも見習って欲しいと思う。
あ、でも秀吉先輩にはねね先輩がいたか。唯一のリア充だわ。物騒なこと言えないほどお似合いだけど。
「それで、賭けの理由は何だったんだい?」
「…そこ掘り下げます?」
「ワシも聞きたいぞ!」
「…無理強いはしない。お前が話してくれるなら、嬉しいがな」
ちょっと悲しそうに笑うのやめてくださいってば秀吉先輩。これだからもう無自覚は。
家康はもう聞く気満々だし、半兵衛先輩はスタンバイしてますって感じの笑顔だし。
これもうライフカード出すまでもなく話すしか選択肢ねーじゃん。まあ、減るもんでもねーしいいけど。
たいした話じゃないですよ、と切り出してからみんなを見ると、同じタイミングで前のめりになる。
…あの、だから喋りにくくなるんでそういうのやめてくれませんかね。
「ただ告白されただけの話ですよ」
「…告白とは、恋愛感情でかい?」
「思い違いだと思うんですけどね」
「それで? どうなったんだ?」
「ぼくが勝ったから、どうもなってないな。また来るとは言ったけど」
それも本当かわからないけれど。ただ単に賭けを楽しんでいるのかもしれないし。
でもきっと今、三成に何らかの形で叱られているのだろう。まあ、初対面のぼくには大して関係もないことだけど。
そんな薄情なことを思っていたら、家康が至近距離でぼくの顔を覗き込んでいた。おま、近いよ。
「お前は、それでいいのか?」
「どういう意味だ」
「賭けに負ければ、すんなり付き合うのか?」
「そういう約束だからな」
「…ワシは、いやだ」
「は?」
「ワシは、お前に本当に好きな人と付き合って欲しいし…それに―いや、なんでもない。ワシの独り言だ、気にしないでくれ」
それじゃあ、ワシも用事があったからそろそろ失礼する。犬の件、楽しみにしてるよ。
家康は微笑んでぼくの頭を数回優しく叩くと、こちらを見ずに手をひらひらと振って歩いて行った。…のに、家康の笑顔が少し苦しそうに感じたのはぼくの気のせいなんだろうか。
ぼくを、薄情な人間だと思っただろうか。ぼくが、悪いの、だろうか。
なんとなくそんな気分になって、家康のいない廊下をじっと見つめる。
「君が気にすることはないよ」
「半兵衛先輩…」
「と言っても、無理な話か。でも、家康くんはそんなことで君を嫌いになったりはしないよ」
「ああ。我も、半兵衛も、三成だって、な」
だから、そんな顔はお前には似合わない。と秀吉先輩が言ってくれたけど、ぼくはそんなに情けない顔をしていたのだろうか。鏡がないから確認のしようがない。
ありがとうございます、とお礼は言っておいた。
「三成くんがいなくて正解だったね」
「そうですか? 三成は別に気にしないと思いますけど」
「…本当にそう思うのかい?」
「…そうですよ。ぼくと三成は、ただの幼馴染みですから」
誰よりも一緒にいた。気が付いたらそれが当たり前になっていて、三成のいない生活なんて考えられなかった。三成のそばにはぼくがいて、ぼくのそばには三成が。ぼくも知らないぼくのことは三成が、他人の知らない三成のことはぼくが。
三成のことはぼくに任せておけばいいと、周りの大人はいつも言った。それでも、ぼくは三成のことが好きだったのだ。
ぼくと三成は、幼馴染みで家族のようなものだから。そう言い聞かせるほどに、ぼくと三成は近すぎた。
「君にそんな顔をさせるつもりはなかったんだ。悪かったね」
「…いえ。こちらこそ」
「このことは、黙っておくよ」
「ああ。勿論、三成以外にもな」
だから、君のペースでゆっくりやるといい。
そう微笑む半兵衛先輩には、本当に頭が上がらないと思う。秀吉先輩にも。
三成だけでなくぼくのことも可愛がってくれて、こんなに気に掛けてくれる。
顔を上げて、と優しい半兵衛先輩の声が心地良く響いてゆっくりと顔を上げる。頬を包まれるように半兵衛先輩の手が触れて、ゆっくり半兵衛先輩が迫ってくる。こつん、と額同士がぶつかった。
半兵衛先輩のファンに見られたら刺されそうだな、なんて物騒なことを考えていると、目を閉じてごらん、と囁かれる。半兵衛先輩に従うまま、ゆっくりと視界を黒に染めた。
「君は、大丈夫だよ」
衝動的に、目を開けてしまった。閉じてって言ったのに、と笑った半兵衛先輩がゆっくりと離れる。
どれだけ間抜けな顔をしていたのだろう、開いてるよ、と指摘された口を慌てて閉じた。閉じなくてもいいよ、と笑った半兵衛先輩はやっぱり半兵衛先輩だ。
「左近くんは、きっと本気だよ。その賭けも、君のことも」
「え…」
「だから、君も本気で接してやってほしい。彼のことも、三成くんのことも」
まあ、軽そうに見える彼にも悪い部分はあるんだけどね。
溜め息を吐く半兵衛先輩は左近くんのことを考えているのだろうか。それがなんだか手の掛かる子供のことを考えるお母さんみたいで、思わず笑みがもれる。
「やっと笑った」
「へっ、」
「どんな結果になっても、誰も君を咎めはしないさ。そんな権利、君自身にもないんだから」
「はあ…」
「ただ、君が今みたいな笑顔になれる。そんな結果で、ありたいと願うよ」
あくまで僕の願望だけどね。ああ気にしないで、君に何か言ってくる輩がいたとしてもこっちですべて片付けるから。
そう笑う半兵衛先輩は女子でなくても卒倒してしまいそうなほど素敵なんだけど、目が笑ってないように感じるのはぼくの気のせいだろうか。
半兵衛先輩に笑顔を返して、この人だけは敵に回したくないな、と改めて思った。
「おい」
「三成。終わったのか」
「ああ。貴様も、次からは軽々しくあいつの遊びに乗るな」
「うーん、努力する」
「貴様…」
「まあまあ。今日うちでご飯だったよな。何がいい?」
「…別に、貴様の作るものなら何でも構わん」
「…おう」
だから、もうちょっとだけ待っててくれよ。三成の隣を離れるには、まだ時間が掛かりそうなんだ。
そう自分に言い聞かせて、三成の隣に並んだ。
fin.