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 すっかり老いたその姿を笑い飛ばして、武器を向け此方を見やるその家族に、物騒な家族だこと、と俺は肩を竦めた。



「なんだ、もうおっ始まってんじゃねェか」
「あァ? お前は…」
「それ以上オヤジに近付くな!」
「あらら、血の気の多いこと。随分な歓迎のされ方だね」
「近付くなって言ってんだろ!」


 白ひげ海賊団の船にお邪魔すると、気付いた奴らはさっそく俺を囲んだ。宴会を邪魔する気はなかったんだがなァ。他のクルーも言い分は同じのようで、雄叫びを上げながら武器はまっすぐ俺へと向いている。
 ちょ、うっさい。響くからそんな大きい声出すんじゃねェよ、と片耳を指で塞ぐ。



「おいおい、勘弁してくれよ爺さん相手に」
「何ワケのわかんねェこと言ってやがる!」
「おい、息子たち! やめとけ」
「オヤジ?」
「そいつァ俺の、旧友だ」


 その一言でポカーンとなったクルーたちは、もっと早く言ってくれよー! だの、早とちりしすぎだろ! だの、コロッと態度を変えやがった。相変わらず歓迎ムードではないようだが。
 言うのがおっせーんだよ、と言う俺を独特の笑い声で笑い飛ばし、まあ座れ、とすぐ横を空けてもらったのでそこに座る。黒髪の元気そうな少年が近付いて頼んでもないのに自己紹介をしたので、自然に其方を見やる。



「なあオヤジ、でもその人年齢離れてるよな?」
「グラララララ! エース、こいつァ俺と同い年だ」
「は…はああぁっ!?」
「予想通りの反応すぎてここまでくるとつまらんな」
「そう言ってやるな。俺のかわいい息子だ」




 へーへー、と呟くとその黒髪パーマの少年を筆頭にリーゼントやパイナップルみたいな頭してるやつ、チビ、女型といった個性的な顔ぶれも驚いているようで、お前の家族は個性豊かだなァ、と酒瓶をぐっと持ち上げて酒を煽った。ニューゲート好みのいい酒だ。



「ちょっとは老けたと思っていたが、相変わらず老けねェなァ、お前は」
「お前は老けたな」
「グララララ! お前も中身は変わんねェだろ」
「それを言うな」


 それにお互い様だろ、と言って酒をまた飲む。クルーの中にはまだ驚く者、感心する者、笑い飛ばす者と様々だ。特に黒髪パーマくんは色々気になるらしく俺が答える暇もないぐらい質問を投げかけてきたが、特徴的な髪型のやつに首根っこを掴まれて連れ去られていった。積もる話もあるだろうからよい、と喋り方にも特徴があるようだ。




「大きくなったな、ロジャーの息子も」
「気付いてたのか」
「敵同士だったお前らより中立だった俺の方が互いのことは知ってんだよ」
「…なァ、俺の船に乗る気はねェか?」
「っだよ、また勧誘か? 他人の世話になるぐらいだったらテメーで生活するわ」



 あの頃からそうだった。俺はニューゲートとロジャーの両方に誘われていたが、1人が楽でずっと1人旅を続けていた俺の返事はノーだった。というか、俺とこいつらを繋ぐ理由なんてそれぐらいしか思い当たらなくて、俺を巡ってこいつらは争っていたような気がする。どうせなら美女にでも俺を巡って争って欲しいものだ、とも思ったがやっぱりめんどくさいと思うあたり俺には心底1人が似合っているのだろう。


「グラララ! そりゃァ残念だ」
「ま、お前がくたばってねェか確認しに来ただけだからな」
「俺ァお前こそくたばってるもんだと思ってたがな」
「ぬかせ。お前らほど有名じゃないんだよ、俺は」



 こいつらに目を付けられていたおかげで海軍に知られるぐらいには有名だが。俺は別になんでもないのに。


「あ、そういや誕生日おめでとう」
「グラララララ! 今更か!」
「忘れてた。言ったんだからいいじゃん、ほら杯出せよついでやっから」
「こんな小さい杯で足りねェだろ、俺もお前も」
「ご老体に響くぞおじいちゃん」
「お前に心配されるほどヤワじゃねェんでな」
「言ってろ、バーカ」




 笑って酒瓶を高くかかげ強くぶつけたそこからはいい音が鳴り響いた。やっぱり俺らはこうでなくっちゃな。





fin.

Happy birthday to Newgate !
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