‥11 | ナノ

「へぇ、じゃあ君は仁王の家族なのか」
「…不本意だけど、そういうことになるな」
「仁王のことは嫌いかい?」
「いや。正直どうでもいい」
「…正解だね」
「え?」
「好きの反対。嫌いじゃなくて、無関心、だからさ」



 無関心、というほどではないのだが、興味がないのは確かだろう。というかそもそも、幸村は俺と話してばっかりで部活をする素振りがまるでないのだが。その旨を指摘すると、どうやら彼は病み上がり―というか、難病を克服したばかりで無理はしないようにしているらしい。悪かったな、と言うと気にしてないと笑顔で返してくるのも、克服したからこその余裕なのだろう。




「それじゃあ俺は何て呼んだらいいのかな。仁王が2人いたんじゃ困るでしょ」
「ああ、その点は問題ないよ。俺、名字変えないから」
「あれ、そうなんだ」
「またいつ名字変わるかわかんないし」
「随分冷たい言い方だねえ」
「…可能性の話をしてるだけだよ」



 実際、新しい父親ができたのはこれが初めてじゃない。何人か新しい父親になった顔は覚えているものの、記憶にない人もちらほら。母さんは新しい人ができるたびにいつも俺に謝るのだが、そのたびに気にしないでと俺が笑うのもいつものこと。むしろ足枷になるはずの俺を傍に置いてくれているのだ、まあ息子という邪魔者がいても一緒になりたいほど母さんは人を惹き付ける美貌を持っているということなのだろうけど。


「何やら楽しそうに話しとったのう」
「…脅かすなよ」
「その割には驚いとるように見えんのじゃが」
「お前には散々驚かされたからな」
「ふふ、仲が良いようで良かったよ」
「…だから仲良しじゃないって」



 幸村との会話中、いきなり肩に重みを感じれば背後から聞こえた声。仁王だ。もはやこういう喋り方をするとわかった俺はきっとこれが日常茶飯事なのだろうと学習し、仁王は些かつまらなさそうだ。あと重い、と独り言程度に呟いたら、まーくん重くないもん、とか言いながら重心をかけて密着してきやがった。痛いよ馬鹿、と仁王を叩いてからの幸村のこれだ。…勘弁してくれ。




「ああ、幸村。真田が呼んどったぞ」
「ああ、ありがとう。じゃあ俺は行こうかな。また後でね」
「ああ、うん」
「じゃあの。ほら行くぞ」
「わかってるって…だから引っ張んなっての、」


 笑顔で手を振る幸村と別れて、制服姿に着替えた仁王と並んで教室を目指す。無論、俺はその前に職員室へと向かわねばならないのだが。
 周りの視線が痛くて、そういえばコイツ顔はいいんだったな、顔は。と思って改めて見つめてみた。性格はよろしくないけど。あと身長も高いし、銀髪ってのも魅きつける要素のひとつか。



「何じゃ、そんなに見つめて」
「お前のせいで目立つ」
「お前さんがそれを言うんか」
「は? 俺?」
「…ま、今はええか」


 俺だけが知ってればいいんじゃ、という言葉の意味がわからなくてそれを顔に出しても、俺の頭を仁王は笑って撫でるだけだった。





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