‥10 | ナノ

 今俺はものすごく視線を浴びている。いや、外見でじろじろ見られることは今までには何回もあったが、今回は断じて違う。絶対コイツが目立つからだ。



「…いい加減手ェ離せよ」
「嫌じゃ。そしたらお前さんまた離れるじゃろ?」
「…あーもうわかったよ、離れねェから」
「最初からそう言えばいいんじゃ」

 そう言うなり仁王はいとも簡単にパッと手を離した。俺は俺であまり目立ちたくなかったので仁王から少し離れて歩いていたところ、ただの悪戯か手を繋いできたのだ。そりゃもうしっかりと。
 手を離してくれたものの今更後の祭りだ。悪目立ちしたくないという俺の願いはいとも簡単に崩れ去った。




「絶対目立った…」
「何言うとるんじゃ。テニス部に行けばもっと目立つに決まっとるじゃろ」
「…は? ただの部活動だろ?」
「行けばわかるぜよ」


 意味がわからないという俺はテニスコートを目の当たりにして初めて理解した。…濃い、濃すぎる。ていうかお前ら本当に中学生か? 仁王を見つけるなりみんな声を掛けて、必然的に俺は注目の的。…気まずい。



「俺のツレじゃ。見学させてもいいかの」
「ああ、構わないよ。ベンチでいいかな?」
「あ、全然」

 そう言ってどうぞとベンチに一緒に座った人物はジャージを肩に掛けている。部長の幸村です、よろしく。と言われて俺も軽く自己紹介する。仁王よりも常識はありそうだと思ったら部長さんか、なるほどね。



「君は見かけない顔だけど…」
「ああ、俺今日からこの学校だから」
「じゃあ編入生?」
「そういうことになるな」
「入部希望者ではなさそうだね」
「…わかるのか?」
「仁王の横であんなに不服そうな顔をしてればね」


 …俺、そんなに顔に出てたのか。部長さんもとい幸村は、君は仁王と違って顔に出やすいみたいだ、と柔らかく笑う。すぐ顔に出るのは自他共に認めるが、仁王と違うとはどういうことなのか。その疑問も顔に出ていたのか、俺が聞く前に仁王が詐欺師と呼ばれていることなどを教えてもらったが、それは初日に仁王自身の口によって告げられていたので特に驚きはしなかった。俺の話を聞くと、ふぅん、と幸村は曖昧に呟いた。



「…なに?」
「いや、こんなに仲が良かったとは思わなくてね」
「…やめてくれよ」
「おや、不服かい? まあ、見たところ君は仁王のことを好きという感じではないしね。嫌いというわけでもなさそうだけど。…ああ、むしろ無関心、かな?」
「…幸村って何者?」
「ふふっ…ただのテニス部の部長、だよ」
「ただのテニス部ねぇ…」



 そのテニス部が“ただの”じゃない場合、その部長は只者じゃねえってことになるんだがな。





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