‥06 | ナノ

 一緒に戻ると、それまで楽しそうに談笑していた母さんが、デザートもうお願いしていい? と聞いてきたので、うん、と頷き席に着く。近くにいた店員さんを呼んで伝えると、向かいに座る仁王が俺をじっと見る。



「よくそんな甘いもん食えるのう」
「ああ、この子はチーズケーキだけは好きなの。よく作ったりもするんですよ」
「それは一度食べてみたいね」
「時間があれば、喜んで」

 …ていうかケーキなんて店で作ってるからその余り持ってきたほうが早いんだけど。やがて運ばれてきたチーズケーキを、ブルーベリーソースに絡めて食べる。ベイクドタイプなのに比較的あっさりしていて、ひたすらその味を舌に刻み込んだ。



「…食べる?」
「…甘い?」
「そこまで甘くないよ。さっぱりしてる」
「じゃあ一口だけ」


 じっと見られてなんだか食べにくかったので、さっき俺も貰ったということで分けることにした。…のはいいんだけど、口を開けて待ってるあたり俺がやらなきゃいけないんだよな。小さすぎず大きすぎない程度にケーキを運ぶと、数回噛み締めて彼は、もうちょっと貰っていいかの、と聞いてきた。どうやらお気に召したようだ。俺も正直腹八分目を越えてるし、残りは全部あげることにした。


「すっかり仲良しね、あなたたち」
「もう兄弟じゃからのう」
「雅治のほうが弟みたいだな」
「失敬ナリ。こういうのは誕生日順が妥当じゃ」
「…誕生日、いつ?」
「12月の4日じゃ。お前さんは?」
「…俺も、なんだけど」


 なんというミラクル。誕生日まで同じでびっくりする俺らに、運命的ねぇ、なんてにこにこ笑う母さん。確かに確率的にはすごいが運命って…。これ以上いくと何時に産まれたとか細かい部分まで話が行きそうだったので、この話はこれにて止め。



「ああ、帰ったら荷物整理しなきゃ」
「俺も手伝ってやるぜよ」
「別に1人で大丈夫だよ」
「2人でやれば早く済むじゃろ?」


 帰りの車の中、俺の頭の中はごちゃごちゃの荷物。そんなことを言われた手前断れないので、じゃあお言葉に甘えて、と俺は首を縦に振った。母さんは父さんと相変わらず楽しそうに話している。
 思わず出た欠伸に、明日学校なのに大丈夫なのかなぁ、とそんなことを呑気に思った。





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