‥03 | ナノ

「なんか見慣れん車が止まっちょるんじゃが」
「おかえり、雅治。今日は早かったな」
「幸村が通院でのう、早く切り上げた。…そちらさんは?」
「ああ、紹介するよ。新しく家族となる人だ」
「………ほう、」



 俺らの前に現れたのは銀髪という派手な外見、まあ、派手という面では金髪な俺も他人のことは言えないのだが。まるで対のような俺と彼を見比べて、ほんとの兄弟みたいね、と母さんが耳打ちした。吟味するようにじろじろと見る瞳が気色悪い。母さんに続いて笑顔で会釈すると、彼はさして興味なさそうに視線をはずした。



「とにかく腹が減ったんじゃが」
「ああ、今日はまだ荷物が片付いてないからみんなで外に食事にでも行こうと思ってるんだが」
「よかよ。着替えてくる」
「じゃあ先に車で待ってるぞ」


 スッと横を通り過ぎたのを確認した俺は肩の力が抜けたように安堵の息を吐く。正面から見た時は気付かなかったが後ろで少量の毛束を結わえていたようだ。しかしそんなことはどうでもいいので、携帯と財布を身に付けて俺もさっさと車に乗り込む。運転がその人…便宜上、父さんと呼ぶことにする。助手席が母さんとなると後部座席は俺とさっきの奴しかいないわけで、なるべく端に寄るように座った。




「終わったぜよ」
「よし、乗って。じゃあ出発するぞ」

 こうしてまだギクシャクした感じが拭えない異色な4人を乗せた車は車道をどんどん走る。どこ行こうか、なんて話が前の方で行われているのは息子である俺らが適当に答えたからだ。



「、ん」
「…何か?」
「アドレス交換するぜよ。携帯貸しんしゃい」
「…あぁ、うん」


 肩をとんとんと叩かれて横を見ると、彼は俺をじっと見ていた。戸惑いながら返事すると返ってきたのは意外な言葉。こんな手前断れるはずもなく、俺の携帯を奪った彼はちゃっちゃとアドレス交換を済ませて俺に携帯を返してくれた。その際に指が触れて、手を包み込まれたような感じがしたのは気のせいだろう。



「何だ、もう仲良くなったのか? 打ち解けるのが早いなあ」
「ふふ、ほんと。羨ましいわ」
「何言っちょる、こんな美人捕まえて。俺のほうが羨ましいぜよ」
「あら、お世辞が上手ね」


 俺を外した3人がまるで本当の家族のような会話をすることながら、俺はアドレス帳に登録された“仁王雅治”の文字を眺めた。読みは“ニオウマサハル”。…どちらにせよ変わっているのは違いない。
 消そうかとも思ったが一応家族なんだから緊急時の連絡は必要かもしれないし、交換しただけで連絡のとりあいはしないってことも有り得る。何だったら無視すればいいだけの話だ、俺は携帯を閉じて外の景色に視線をうつした。





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