☆07 | ナノ

「…ん、」

 寝苦しさに目を覚ます、暑い。千歳さんの腕はしっかりと俺の腰に回されたままで、いや、さっきより身体が密着している。じっとり掻いた汗が気持ち悪い。なんとか千歳さんの中から抜け出して扇風機のスイッチを付けた。ああ涼しい。



「…なんばしよっと…?」
「すいません、暑かったんで。クーラー付けましょうか?」
「…いや、よかよ」


 汗で張り付く服が気持ち悪かったので半裸になりながら服を漁っていると、千歳さんは半分程しか開いてない目で俺を見る。その様子に思わず笑いそうになりながらも、薄手の服を選んで上からすっぽり被る。



「もう俺買い物行きますけど、千歳さん寝とってもええですよ?」
「…行く」
「…大丈夫ですか?」
「心配なかよ。…ばってん、あと10分時間欲しいったい」
「どうぞ?」


 そう言うと千歳さんは意識を失ったようにばたっと俯せになった。…コレ二度寝フラグ? まあ10分経っても起きんかったら千歳さんは置いていけばええか、なんて俺が白状なことを考えていたその時。千歳さんがすごい勢いで起き上がったので、俺はビクッと跳ねると同時におわっびっくりした! と叫んでしまった。



「そがんびっくりせんちゃ良かたいね」
「あ、すんません。まだ10分経ってへんですけど」
「あんまり寝過ぎても良くないけんね」

 すんません、俺が失礼なこと考えとったまさに今千歳さんが起き上がったんで心読まれたかと思ってびっくりしました。とは言えず、俺は曖昧に笑った。でも千歳さんのこの穏やかな笑顔を見る限り心は読まれてへんな、良かった。確かめっちゃ眠い時って仮眠取ったらええって聞いたことあるな、最もその前にぐっすり寝ているわけだが。




「なんか食いたいもんとかあります?」
「うーん、いきなり言われても思い付かんとばってん」
「ですよねー。…あっ、千歳さん今日はよろしゅうお願いしますね」

 …何が? というように千歳さんは首を傾げたが、あっここです、と俺が目的地のスーパーに入った途端千歳さんは身をもって知ることとなる。




「…タイムセール…?」
「千歳さん早くこっち!あっあの肉取ってください」
「…こいね?」
「はい、次はあっち」
「ちょっ…」


 戦場と化したスーパー内でぐいぐい引っ張っていく俺に、千歳さんは戸惑い気味。千歳さんは背が高いので俺がいつも苦労して手に入れる戦利品を次々に籠に入れてくれた。





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