☆03 | ナノ

 後日、早めに起きた俺はまだ寝てるであろう兄貴を起こすべく部屋に向かった。ノックをしたが返事はないので侵入を試みる。
 一言声をかけてからゆさぶっても起きる気配はない。ただのしかばねのようだ。


「兄貴起きろや、今日練習やろ?」
「ん〜…ミユ?」
「ミユちゃうわ引っ付くな気持ち悪い」
「…かたい」

 何を寝ぼけてるのかそのミユ…女の子と勘違いしたらしく抱き付いてきた。ちゅーかエリカさんはどうした、相変わらず手早いな。
 固いのも当たり前、俺は男や。それでも離れる気配がなかったので思いっきりつねったったら痛がった後につねられた箇所をさすりながら起きた。ざまーみろ。




「もうちょい優しく起こしてや…」
「起きん兄貴が悪いんやん」
「大事なお兄様のお顔に傷がついたらどないするつもりや」
「くだらんこと言っとらんと早よ着替えろや。朝飯出来とるで」
「……………おん」



 ああいうウザイのはスルーに限る。スルーされた兄貴はこたえたのか、何も言わず服をもそもそと出し始めた。着替える意思がある兄貴を確認して俺も下に向かう。


「今日練習昼までやから、その後に一緒に連れて来るわ」
「おん。帰り何時ぐらい?」
「まあ家に着くのは1時過ぎるやろな」

 そんな慌てて準備せんでもええよ、と言う兄貴に頷きながら、今日の昼飯は何にしようかなあ、なんて考えとったら兄貴がたこ焼きと言い出したので却下した。たこ焼きなんてどうせ部活のみんなと食っとるやろ。うちたこ焼き機あれへんし。




「大体うちにたこ焼き機ないっちゅーのが異常や」
「ないもんはないんやからしゃーないやろ」
「ほんならたこ焼き機買おうや」
「たこ焼き機はたこ焼きしかできひんやろ」

 料理の幅が広がらん、却下。キッパリ切り捨てる俺に、不況の影響でお小遣いカットされたサラリーマンお父さんの気分や、と兄貴が嘆いた。
 何でやねん。大体兄貴働いてへんやろ。こんなお父さん嫌やし。




「さて…と」


 兄貴を送り出した後、俺は日曜日の主婦さながらの家事にとりかかる。洗濯は済ませたし、俺は朝飯食わんから皿洗いは兄貴のぶんだけで済んだ。やることが特になくなった。

「…買い物でも行くか」



 昼飯のメニューはまだ決めてないがどうせ買い物には行かんといけんし、メニューはその時決めればええ。運が良けりゃ主婦の人らに何か貰えるかもしれへん。
 マイバッグに財布と携帯、それにiPod。突き抜けるような青空に不釣り合いな爆音をBGMに昼寝せずにはおれん外の世界へ踏み出した。





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