☆02 | ナノ

「あ、明日人来る」
「誰? 財前?」
「ちゃう。今日新しいやつ入ってきてな、熊本から来たんやって」

 熊本ってことは九州か。今日の戦利品で作った鶏の照り焼きと、主婦の方々にいただいた煮物を食べながら兄貴と話す。
 この煮物めっちゃええ味出してるなぁ、白飯がよく合うわ。



「泊まるさかい、飯もよろしゅう」
「好き嫌いは?」
「トトロが好きらしいで。ちゅーかジブリ」
「トトロ関係あれへんやろ」


 食い物ちゃうし嫌いな物わかれへんし。しかしトトロが好きなんてかわいい趣味やなぁ、俺もジブリ作品ならトトロがいっちゃん好きやけど。というのも、母さんがトトロ好きやから家はトトログッズ多いんやけど、何故かそのバリエーション豊富なトトログッズは俺の部屋に集結している。

 ぶっちゃけあんまり帰らへん家の部屋に飾っても飾られたトトロが可哀想やん、それなら活用しとるあんたの部屋の方がましやわ、とのこと。
 何でやねん、それなら仕事場にでも飾れや。飾られたトトロが可哀想ってなんのこっちゃ。


「財前は来ぇへんの?」
「何やねんさっきから財前財前って」
「ぜんざい作る約束してん。ついでやったら手間掛からんで済むと思って」


 財前といつそんな約束してんねん、どこか不機嫌そうに言う兄貴に、交換条件なんやて、とワケを説明する。
 兄貴を見ると頬を膨らましとる、またくだらんことに嫉妬しとんのやろ。そしたら案の定、俺にはたこ焼き作ってくれへんのに、ボソッと呟いた。子供かお前は。ちゅーか兄貴が頬膨らましたって可愛くないねん。良かれと思ってやっとるんなら今すぐ止めろ、気持ち悪い。

 何や文句あんのやったら食わんといいんやで?
 そう言うと兄貴は慌てて飯にがっつく、単純なやっちゃ。所詮食べ盛りの男子なんてこんなもんや。



「言っとくけど明日は3人で過ごすんやからな」
「はぁ?」
「俺と千歳とお前…あ、千歳って言うねんけどな」
「いや、その千歳って人はいいとして。何で俺もおらなあかんねん」
「アホ、男2人なんてむさ苦しいだけやろ」
「男3人のがもっとむさ苦しいやろ」


 ちゅーか泊まる言い出したん兄貴やろ、人数が少ないにしろ多いにしろ男しかおらん時点でむさ苦しいこと決定なんやからそこは我慢しろや。
 まあ予定もないしええよ、とそこは快く承諾した。兄貴もおったら気まずくあれへんやろ。




「どんな人? 外見とか」
「巨人やな。とにかくデカい」
「…身長は?」
「194センチ」
「はぁっ!?」


 何やねん194センチて。200センチ手前やん、もういっそのこと200センチいったれや。え? ちゅーか中学生やろ? 大学生でもそんなデカいやつおれへんぞ。

 お前170あれへんもんなぁ、可哀想に。
 ほっとけや! 大体俺の身長別に低いわけじゃあれへんし、財前より高いし。…1センチやけど。この前の身体測定まではもう1センチ高かったんや、あれ絶対あの身長計が悪いんやて。何で身長縮むねん、物理的におかしいやろ。
 因みに体重は5キロほど減っとった、何でやねん。女子がおる手前文句は言えんかってん、女子は体重に敏感やからな。


「…千歳に身長分けてもらい、俺からも頼んだるわ」
「しばくぞ」





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