☆01 | ナノ

 俺の兄貴は、ほどほどにブラコンである。好きな人ランキングでトップが自分、2位が母さん、3位が俺。自分が一番美しいと思ってるアイタタで、そんな兄貴を産んでくれた母さんが2位、兄貴には負けるがかわいい顔で生まれてきた俺が3位らしい。どんだけ自分好きやねん、きっしょ。しねよ。



「しかしお前の兄ちゃんモテモテやなぁ〜」
「そうか? 普通やろ」
「お前、どの口が言ってんねん! あの白石先輩やぞ!?」


 俺リスペクトしてんねんぞ! と興奮気味に話す森高をよそに、俺も白石なんやけどな、ボソッと呟いた。そう、俺はあの白石蔵之介の弟なのである。正真正銘、血の繋がった。あの、と言ったが、別になんてことない、ただちょっと顔がよくてテニスがすごいくらい。それ以外はごく普通の中学生。

 絶頂が口癖という気持ち悪い一面も持っとるし。何やねんエクスタシーって、日本語使えや。しかもその前にちょっと喘いどるし、何が悲しくて家族の喘ぎ声聞かなあかんねん。確かあるバンドの歌で、ヌルヌルシコシコエクスタシーって歌詞あったな……おえっ、きもちわるっ。



「俺にはどこがいいのかサッパリわからんわ」
「同感や」
「白石に財前、お前ら相変わらず腹立つわぁ……」
「はっ、モテへん男の僻みやな」
「でもこないだこいつらまた告白されよったん俺見たで」
「お前らなんか男の敵やあぁあ!」

 何時の間にかやってきた財前が俺に同意して、水月の発言にまたヒートアップする森高のテンション。ちゅーかコイツがもともとテンション高いんやな。俺と財前のテンションの低さを見て、お前らの暗さは関西人やあらへん! って指さされて言われたことあったっけ。ほっとけや。




「モテるやつなんかにモテへんやつの気持ちなんかわからへんのや…」
「せやかて、好きなやつにモテな意味あらへんやろ」
「せやなぁ」



 そんなんモテるやつの言い分や! あーほっ! と何ともガキな捨て台詞を吐いて森高は出て行った。
 アイツの場合特にモテへんからなぁ、女には〜。水月の発言に他意はない。男友達には好かれるタイプやけど、女子に告白でもしよったら、友達としては好きやねん、でも友達としてしか見れへんわ…すまんな。と言われて断られるのがオチだ。だから余計俺らのことは気に入らんのやろ。


「あほらし。俺部活行くわ」
「あ。俺ももう帰らな」

 どうせ一緒やから財前と校内を後にした。
 また厄介なことに両親は共働きで仕事が忙しくあまり帰ってこないため、家では兄貴との2人暮らしみたいなもん。せやから部活をやっとる兄貴に代わって家事は俺の仕事みたいなもんで。洗濯とか料理とか、まあその他諸々は俺が引き受けとる。別にやりたいこともあらへんし、家事ができるのは自立に繋がるからええんやけど。



「よし、タイムセール余裕で間に合うな」
「…お前着実に主婦への道辿っとんな」
「何言ってんねん! 主婦の間でアイドルやねんぞ、俺」
「嬉しいんかそれ」
「おかずとか貰えるし」
「…………」


 今度買い物付き合ってな、嫌やし一人で行けや、一人で買える数決まってんねん、……見返りは? ぜんざい作ったる、…しゃあないな。お前どんだけぜんざい好きやねん。
 財前と取引をして、ほな財前部活頑張りや、とその場を後にした。今日は安く買えるとええなぁ。





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