爵は金髪に恍惚(オリジ)

「旦那様、また彼がいらしてますが、ご遠慮して頂きましょうか」
「いや、いい。入れてやれ」
「‥畏まりました」
 そう言って彼女が部屋のドアを開けると同時に罵声が聞こえてきた。彼はまた酔っているのだろう、大きく呂律の回らぬ声をあげて、ドタドタと足を鳴らし歩く。
「よお、伯爵さん」
「やあ、こんにちは」
「用件は分かってんだろお?」
「ああ」
「じゃあさっさとやって金貰ってくわ」
べろべろに酔った彼は何の躊躇もなく引き締まった体をさらけ出し、ベルトに手をかけた。もう四十になろうというのに、しなやかで美しい体。
「‥そんなに酔っぱらった君は抱けないよ」
「んだよそれ、起たせてやるから早く脱げ。これは逢い引きじゃねえんだよ、取り引きだ」
「‥今日はやめておこう。少し寝ていきなさい。代わりに夕食を用意しよう」
「は、こんな汚ねえおっさんは抱きたくねえか」
「君は綺麗だよ」

 彼は国を守った英雄だった。だが英雄も20年経てば、見返りなしの生活では生きて行けなかった。
それでも彼は国を守ることを仕事にすることはなかった。その代わり、彼を求めた私に対しビジネスとして体を開くことにしたのだ。
 国の為に全てを尽くし戦った英雄を抱く時、私は幸福感と興奮を味わった。英雄の影は薄れ、酒と煙草の匂いを染み着かせた彼を国民は皆蔑んだ。だが彼の肉体は今でも英雄の栄光と誇りを失わず、彼の髪は金色の輝きを失っていない。私はその彼に、いつでも心を奪われるのだ。





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