罪状:ラストコール



 無職同然のあの男は毎日の生活費もままならないようだったから、電話すらかけたくてもかけられない状況なんだろうと思って仕方なくこの俺が携帯を授けてやったってのに、全くかけてきやがらねぇ。誕生日もクリスマスも、いつも俺から。それに、かけたはいいがいつも喧嘩になる。12月31日、大晦日の今日も、
「ふざけんなよてめぇ俺がこんだけしてやってんのにその態度!」
『そーゆーとこがムカつくんですぅー。大体銀さん頼んでませーん』
「もういい、別れる」
『どうぞご勝手に〜』
ガチャンッ
(またやってしまった…)
 電話することでさえ珍しいのに、1時間以上も喧嘩に費やしてしまった。
 今年が終わるまであと数分。年の一番始めに声を聞く予定だったが、もう一度電話するなんてのは俺のプライドが許さない。
机を見るとまだ手付かずの仕事の山。することもないし片付けるか、と筆を持った瞬間電話がなった。
表示を見ると坂田の2文字。思わず通話ボタンを押した。
『俺』
「んだよ、さっきの続きか?」
 時計の長針が12を指す。
『…あー、まぁアレだ…今年もよろしく!じゃ!』
 俺の返事を待たず一方的に電話が切れる。
 …くそ、なんだよあいつ、あんなボロクソ言いやがったくせに。もう口聞かねーっつってたくせに。
 喧嘩してたこととか、プライドとかはもうこの際全部無視することにした。溜まってる去年の仕事も全部無視だ。今俺がするべきことは、

ピンポーン
『おい新八出てこい』
『無理です。もうおこた入っちゃったからでれません。銀さん丁度トイレから出たとこなんだから行って下さい』
『えー神…『無理アル』
『仕方ねぇな…』
扉の向こうでガチャガチャと音がする。
「はいはいこんな時間にどなた…」
「もっと早く出やがれ」
「え、なんで?今年はもう会えねーって…」
「もう“今年”じゃねぇだろ、…来い」
「えー!ムリムリ、銀さんもう着替えちゃったからァァ!」
寝間着姿の銀時の腕を無理矢理掴んで抱き寄せると、奥からチャイナの声。
「あー銀ちゃん連行されてるアルかー?」
「ちょ、神楽ちゃん!あ、大丈夫です僕らはなんも見てませんから!」
「12時過ぎたら大人の時間だ。ガキは寝てろ」
「うわー銀ちゃん汚らわしいアルもう私に近づかないで」
「神楽ちゃーん!?ちょ、土方てめー何いって、」
「ほら来いよ、署マデゴ同行願イマス」
 万事屋から坂田を引きずり出して、雪の積もった道を歩き出す。
「てめーのせいで変な誤解が…」
「誤解じゃねぇだろ」
「つーか寒ぃんだけど!」
「じゃあどっかぬくいとこ行くか」
「行く。奢れよ」
「仕方ねぇな」
(っしゃあー!糖分ー!おしるこー!)
(どっかにラブホねぇかな…)
 除夜の鐘の音が響く中、今年も煩悩だらけの俺達。



昔書いた文引っ張ってきました



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