夏休みが終わる。真夜中の通学路は誰もいなくて車すら一台もなくて俺たちふたりだけで。チャイムが鳴るわけでもないのに汗だくで走った。日が暮れてだいぶ経つのに暑さは変わらない。毎晩熱帯夜だ。
 天の邪鬼な俺たちは、夏休み最後の夜に、明日から嫌でも着させられる制服を着て学校に乗り込んだ。特に思い入れがあるわけでも、星が綺麗にみえるわけでも、家出をしてみたかったわけでもない。夏休みが終わるからだ。許されていたこの関係も終わってしまうような気がしたからだ。
 生ぬるいアスファルトに寝そべる。蝉が鳴いた。坂田の呼吸が聞こえた。鼓膜の内側で俺の心臓がないた。

「おいニコチンコ」
「んだよ天パ」

 制服からタバコを取り出す。肺に煙を取り込んだら少し落ち着いた。肺いっぱいに吸った煙をほとんど見えない星空に吹きかけた。月明かりで煙が銀色に見える。

「こっち向けよ」
 視線。血が沸いた。この感覚を俺は何回経験しただろう。たまらなくなって、起き上がった。振り向いて、でも坂田の目は見なかった。頭ごと抱きしめた。

「ニコチン臭え」
「うるせえ」

 汗だくだった。湿ったシャツを握りあった。午前1時42分。また蝉が鳴いた。





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