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手を引いてリビングに入ってく兄さんの背中を軽く睨むが意味はない。

 ソファーに座らせられ「温和しくしてろ」と釘さして兄さんは救急箱を取りに行った。

ちょ、怖いんですけどあの人。
 瞳孔開いてるから迫力あるぅー。

救急箱を持って来た兄さんは、無言で傷の手当てをし始めた。
 お、怒ってるよこの人…!!
無言の圧力…!!


「…天人高の奴か?」

「って!」


ベチン!と頬に湿布を貼って問い掛けてくる兄さんに、涙目になりながら小さく頷いた。
 ここで嘘なんか吐いたら確実に殺される。

というか、通じないと思う。


「お前がこんなやられるなんて珍しいな」


 呟かれた言葉には、弱みか何か握られているのか?っていう問いも含まれていただろうが敢えて私はそれに気付かない振りをした。


「不意打ちだったからね」

「…気をつけろよ」

「ほーい。…つか、意外だね」

「何が?」

「学校と同じ様にすると思ってた」

「俺の意志じゃねェからな」

「ゔっ…!す、すんません」


それもそうだ。
 痛い所突いてくるなー…。


「次、腹出せ」

「へ?」

「さっきから押さえてんぞ」


向かい合う形で座っていた兄さんに言われ、無意識のうちに蹴られた腹部を片手で押さえていた事に気付く。

 し、しまった…!無意識にやっちまった…!!