もしも妖怪ならば。 | ナノ

せめて最後まで




「やっ!哉太」
「…なんだよ、お前。また来たのか?」

深い森の奥の奥。

私の顔を見て哉太は少し嫌そうな顔。

少し前。
私は、たまたま迷い込んだここで出会って哉太に助けてもらってた。
それから色々あってたまにここに通うようになったんだ。

「もう来るなっていったのに」
「いやだ」
「俺なんかに会って何が楽しいんだよ。さっさと行かないと食い殺すぜ」
「別に、いいよ。」

哉太は妖怪だ。
人を食べて生きてる妖怪。

でも、哉太はそんなことしない。
食い殺すよ、ってのも口だけだ。

哉太は心優しいから、そんなことはできないのだろう。

きっと、もう何年も口にしていない。
だから体が弱っていて今にも消えそうだった。

「何でそんなこと言うんだよ」
「だって、私哉太が消えたら悲しいもん。哉太も、このまま消えちゃってもいいの?」
「…いいよ、別に。」
「駄目だよ。」
「いいんだよ。俺なんか人間に有害なだけだろ。人を殺さなきゃ生きていけないんだから」
「そんなこと、ないよ!」

そして、哉太を抱き締める。
あまりに悲しそうな顔をするから。

「私、哉太がす…」
「やめろ」

言おうとして言葉を遮られる。
そして、腕に力をこめてぎゅーっと抱き締めかえされた

「それ以上言うなよ…辛くなるだろ」
「哉太…?」
「俺は…言われてもお前を幸せになんかできないから」

哉太が悲しそうに言った

「俺は、多分あと十年もしないうちに消えるだろうから…」
「だから、私を」
「お前がいないのに生きていたくなんかない!…もう、どうしようもない。そもそも、妖怪と人間…」

人を食う妖怪…

「じゃあ…消えるときは一緒にいよう?」
「え?」
「そしたら、寂しくないよ。一人でなんて悲しいことは言わないで」
「名前…。」
「私も、哉太がいない世界で生きていたくないから」

私が言うと、哉太は悲しそうに駄目だと言った

「お前はちゃんと生きるんだ。最後まで」

ーそして、俺を覚えててくれればいいんだ。

「そしたら、お前の心でいき続けてやれるだろ?」
「うん…そうだね。」




だから、最後まで…最後の日まで精一杯生きよう




ー運命はとても残酷でした、








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