ココロを欲しがる死神
彼の紅い髪が、たまに血の色に見える。 サラサラと揺れるあの編まれた二本が解かれた時は、特に。
「名前、」
甘い蜜のような響きを持つ彼の声、 ゴーグル越しに見える彼の瞳の色はわからないけど、さぞかし美しいことだろう。
白銀桜士郎
彼が私たちとは違うことなんて最初からわかってた。
「迎えにきたよ、名前」
青いネクタイが揺れる。 カツンとなった彼の白い編み上げブーツはベッドの横にある時計の針と同じように時を刻んでいる。少しずつでも確実に近づいてくる最期、彼はそれを運んできただけだ。
『久しぶりね、白銀くん。』
「なんで俺がここにいるのかは驚かないんだね。」
『だって、』
わかっていたもの
そう言えば彼は苦笑しながらそっか、と笑った。そして私の座っているベッドの縁に座る。 珍しく髪を結っていないから長い髪が少しだけ白いシーツに落ちた。その髪を一房掬って優しく撫でる。柔らかい感触を羨ましいと思いながらも、しばらくしてからそれを離した。
「……これからどうなるかわかってる?」
『なんとなく、だけど』
「……怖くないの?」
『怖いよ、』
即答すれば彼は眉間に皺をよせた。あぁ、そんな顔しないで。
「…………名前は、さ。」
『うん、』
「心と魂、取られるとしたらどっちがいい?」
キラリ、と彼の手の中にあるゴーグルが光った。長い睫毛が微かに揺れる。 私はなんと答えたら、彼を悲しませずにすむのだろう?答えはわからない。 彼の心は、人間の私には掴めない。
小さく息を吐いて、言葉を出した。
『魂かな。』
「なんで?」
『心だけは、私のもの。』
そう答えれば、彼は私の首を優しく掴んだ。 悲しそうな瞳、冷たい手よりもそっちが気になる。私はあなたを悲しませてしまったのかな、
「俺に心をくれれば、死なないんだよ?」
『………。』
「少しでも俺を愛してくれれば、俺は役目も運命も何もかも投げ出せるのに!」
苦しそうに喘ぐ彼、震える手、青い瞳から流れた一筋の涙。 どうして、と泣く彼の手を優しく包んだ。
『優しい、優しい白銀くん。』
「・・・っ、」
『好きだよ、でも心はあげない。』
泣いている彼の頬に手をそえた、そして涙を優しく拭う。 私の首にある手が、私の命を奪うのだとしても私は・・・
『あなたを想うこの心だけは、私のものだよ。』
ココロを欲しがる死神 (死を告げる青にも) (これだけは死んでも渡せないから)
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××ならば。様の企画に参加できて光栄です。 いつものくひひな桜士郎の面影がありませんが、全力で執筆させていただきました。 また機会があれば是非参加させてください。 ご拝読ありがとうございました。
湖百合茉莉
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