もしも教師ならば。 | ナノ

もしも陽日が教師だったら


放課後の教室。
夕焼けに彩られた部屋で二年・天文科担任の陽日直獅と
その生徒、名前は対峙していた。




「どうして見事なまでに俺の教科だけ赤点取るんだよ?いじめか?いじめなのか!?」

「凄いよね。見事にギリギリ赤点」

「本当になー。じゃなくて!」


俺は泣くぞ、と愚痴を溢しながらドカリと名前の前に座り、
そんなに怒んなくたって、と名前は冷静に机に置いていた眼鏡を掛け直す。


「そんなに嫌いか?」

「え?」

「この教科」


あぁ…そっちか、と一安心するものの、不安そうな陽日に罪悪感が生まれる。



「嫌い、なんかじゃないよ」

「?」

「赤点取れば直獅先生が気にかけてくれるかな、って…」


意味が把握できなくて呆然とする陽日に名前は大きく深呼吸した後、言葉を続ける。



「ごめんなさい!わざと赤点取りました!そうしたら直獅センセと二人っきりで補習できるかなー、なんて邪な考え持ってました!本当にごめんなさい!!」

「なっ!?」



一気に思いをぶつけると、真っ赤になって戸惑う陽日に迫り強引に唇を奪う。

突然のキスに陽日の意識は停止し





数秒後、思い切り名前を突き飛ばすと幾つかの机を挟んで距離を取る。
カシャン、と名前の眼鏡が床に落ちたが今はそれどころではない。



「いたーい!!普通、女子生徒突き飛ばす?」

「おおお俺とお前は教師と生徒なんだぞ!?」

「関係ないよ!私は直獅センセが好きなの!」


直球の告白に驚き、チラリと顔を出せば真剣な眼差しの名前と視線がぶつかる。


「先生は?」

「は?」

「直獅先生の気持ちは?」


問われて戸惑う。
そっと唇に手を当てれば先程の感触が蘇り、


「………」


無言の後、次第に頬を染めていく陽日に、名前はフフッと微笑む。
足元に落ちた眼鏡を拾い上げて一歩、また一歩と近付く。


「待てー!それ以上は色々と危険だから近付くな!!」


耳まで真っ赤になりながらも精一杯の強がりを叫べば、名前は歩みを止める。


「名前?」

「センセに脈あり、ってのが分かったから許してあげる」

「ない!」

「えぇー?私とのキス、嫌だった?」


わざとらしく手中の眼鏡にキスして見せつければ、陽日は、かぁっと身体が熱くなるのを感じた。



「よーし、次は私の実力を見せつけてあげる」



頑張ったらどんな“ご褒美”貰おうかなー、
不敵な笑みと共に意味深な台詞を残して去って行く名前を陽日は呆然と見送る事しか出来なかった。



「俺は教師、アイツは生徒。俺は教師、アイツは生徒…」


俯きながら呟く陽日の表情が僅かに嬉しそうだったのは誰も知らない。





alarm
(緊急警報発令中!)






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