最近、悪友のアイツがまた考え込むようになった。眉間に深く皺を寄せて、上の空になる事もしばしば。
折角妹も学校に復帰出来て何気ない日常がやっと帰ってきたかと思っていたのに、神代はまだ大きな悩み事を抱えたままらしい。とは言ってもぼんやりしていようとデュエルには抜かり無く、精神状態だって以前よりずっとマシだ。
璃緒ちゃんが入院している時は、掛ける言葉も見付からなくて俺は不自然にならないくらいに距離を置いた程だったから。WDCでの騒動の事も、それが原因でアイツが一時期入院した事も、俺は後から聞いて。そして一連の出来事に目を瞑り以前と変わらない態度で凌牙と接していた。
薄情だと言われようが、これが俺だ。本当は凌牙に問い質したかった。心配だと言ってやりたかった。アイツの抱えた痛みを、片方くらい持ってしまいたいと事あるごとに思ったりしてる。けど、そんな風には上手くはいかないし、彼はそんな事を望まないだろう。
…俺はきっと神代の斜め後ろを歩くくらいの位置がしっくりくるんだ。だから、俺は意図的に凌牙の隣に立ちはしない。
アイツだってそんなことは薄々感付いてるだろう。


「また悩んでるのな。……で?俺は凌牙に理由を訊かない方がいいのか?」

「……ああ、」

「そう。分かったよ」

「怒るか?」

「怒らないし、怒る理由が無い。でも、まあ、今の神代の周りには仲間がいるだろう?不器用なりに頼ってやれって」

そう言ってやれば、彼はどこか安心したように頷いてくれた。俺が踏み込もうとしない一線の向こう、神代は何時もこの一定の距離を維持してくれる。

心地良くて、もどかしい、俺と凌牙の距離を。




二人の距離感の話




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