side:天城




「すまないんだけど、この書類を同じ組の神代君に渡してもらいたいんだ」

放課後、担任である北野右京教諭から学年委員長は来てくれと職員室へ呼ばれると、申し訳なさそうに大きめの茶封筒を手渡された。
学年委員長と言う役職に半ば無理矢理に就かされ(きっと押し付けられた)、早三ヶ月が経とうとしていた。必要最低限にしか議会や仕事も出席しないし受けないという事で目の前の教師と取り引きしたので、大して生活へ負担にはなっていないのだが……書類の手渡しなど俺の仕事ではないんじゃないかと思わず眉間に皺を寄せてしまう。睨んだつもりだったが、こちらを穏やかに見てくる男にそんな牽制は効果があるはずなく。

「ああ、うん。いつもは僕が渡しているんだけど、この後出張が入ってしまってて……どうしても時間が作れなくてね」

渡すだけでいいんだ頼むよ天城君、と困った顔を作り頭も下げられれば不本意ながら了承するしかない。大体、期限付きの書類など、早くに渡すはずだろう!明後日までが期限だとか期限の意味が余りない気すらしてきた。

兎も角。嫌々ながらも預かってしまった封筒を早く渡してこなければ。放課後の今の時間帯ならば部活動へ行く奴も、帰宅部の生徒もまだ教室や駐輪場にいるだろう。

「コイツ、何か部活入っているのか?さっさと渡して俺は帰りたいんだが」

「うーん、あー……」

茶封筒をひらひらさせながら聞けば、随分な歯切れの悪い声が流れた。それがまた一層俺の苛立ちに加担しているのをこの人物は知っていてやっているのだろうか。

「早くしろ、俺は用件は手短に終わらせたい」

「そうだね、うん。彼――神代凌牙君、今自宅にいるんだよ」

そうしてややあって苦笑と申し訳なさを入り混ぜた表情をとる教諭の口から学校とは真逆に近い場所を聞いて、こめかみに青筋をたてたのは条件反射だったはずだ。

おい、それは斜め上の回答だろうが。



 

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