※捏造気味
「何だか元気ないね兄さん」
ハルトは傍らで上の空でいる兄を見上げ首を傾げた。
名を呼んだだけでは心此処にあらずのカイトは帰って来ないようだ。別の事を真剣に考えているのだろう、その心中は多くの思案を巡らせている。じっと見ていてもやはりカイトはぼんやりしたままだ。
「……オービタル7」
「ハイ、ハルト様!」
兄が連れているデュエルロボットを呼べば、ハルトを感知した小型ロボットは嬉々とした声でキュルキュル床を滑りハルトの足元に急停止する。このロボットなら兄が街に出向く際、頻繁に着いて行っているから何かしら記録しているのではないかという考えに至った。ハルトはオービタル7の前にしゃがみ込みつるりとした表面を気が済むまで撫でてから、口を開いた。
「兄さんが元気ないんだ。外で何時もと違う事があったのなら、ボクに教えて」
「カシコマリ!只今、検索中…… 終リマシタ!該当記録一件アリ、該当記録一件アリ」
「あったの?何があったのか報告して?」
元気よく片手を上げオービタル7はハイ、と記録の引き出しから見つけ出した何時もとは違う異常を報告する。
――昼過ぎにナンバーズを所持する少年の存在を察知、いつもならデュエルを嗾けナンバーズを奪うのだが。
「カイト様ハ、デュエリストノ少年ヲタダ見テイルダケデシタ!」
「兄さんが、デュエルをしなかった……」
「ソレ以後余リ喋ッテクレマセン」
どういう事だろう、オービタル7を好き勝手動かして遊びながらそれらの報告を聞き、憂いに満ちた表情でいる兄をそっと観察する。冷静沈着な筈の鋭い眸には、何かを焦がれ惜しむ感情と困惑の色が混ざっているようにみえた。
「もしかしたら、その男の子が気になっているのかも」
「気ニナッテイル?データニハ、アリマセン」
「うんん……、つまりもっとその子の事を知りたいってこと。分かった?」
「了解!」
オービタル7が元気に電子音声で告げる。どこまで理解しているのか怪しいところだが回路は優秀なロボットだ、カイトに少年が気になるのかと問うたりはしないだろう。
「少年ト会エレバ、カイト様ハ元気ニナル カシコマリ!」
「……」
ピコンと可愛らしい音と一緒に放たれた言葉に、ハルトの不安が一気に増したのは言うまでもない。