※璃緒男体化でリオ(♂)×凌牙





神代リオは血のつながりと言うものが嫌いだった。
決して口には出しはしないが、心の奥底ではそれがとても嫌で。どうしてこうなってしまったのかと、初めて愛した人の隣にもたれかかりながら深く深く溜め息を吐いた。

「……リオ?」

俯いた所為か自分の髪で隠れて見えないすぐ横から声が降ってくる。幼い頃から、それこそ生まれてからずっと聞いてきた愛しい声にリオは微かに頭を上げた。

考えなくても直感で分かる、心配した声音。
リオにしか見せてくれない彼の声や仕草、表情がとても好きなのと同時に、とてももどかしく思えた。
リオの隣に座るのは、この世界で一番愛している人物であり、血のつながった兄だ。

「大丈夫だよ凌牙」

そう声に出しながら、リオは凌牙の肩口に額をぐりぐりと押し付ける。甘えたい際に良くする癖だ。薄らと悟ったのか、髪を撫でてきた凌牙の手付きは優しくなる。

リオと凌牙の恋愛は世間では禁忌だと言われる類のものだ。双子で、おまけに男同士。同性同士ならばまだ逃げ場はあった。だがその逃げ場を血のつながりが奪う。……仮令、血のつながりが兄である凌牙と出会わせてくれたとしても、愛してしまった互いを悲しませるなら血のつながりなんて只の足枷だとリオは考えている。

愛しているのに、凌牙へ恋人同士のように手を出せない。身体を重ねてしまったら自分は構わなくとも、凌牙に後戻りは出来なくなってしまう。そんな漠然とした恐怖が凌牙に触れる事を戸惑わせる。

「凌牙、ごめん」

「は?急に謝るなよ、らしくねェぞ」

唇を塞ぎたかった衝動は、凌牙の手を握る事で抑えつけた。手だけで欲が満たされる訳がなく、凌牙に深く触れたいという感情がちりちりと胸を焦がしていく。

好きだ、苦しいほど好きなんだ。
リオも凌牙も、愛を伝える言葉は尽きるくらい囁きあった。どれほど唱え合えども、足りない言の葉を。
しかし、伝えた後に心を掻き乱すのは罪悪感と悔しさだった。そんな事を思い返しぷつりと会話を止め、唇を噛み締めたリオの隣で、凌牙はそっと目を伏せ口を開く。

「俺は、お前を愛した事を後悔してねぇよ」

流石は双子なのか、弟の思考を手に取るように理解てしまう兄に、嬉しさ半分苦しさ半分といった笑みがリオの口元を飾る。

「……そんな事言われたら、俺喜ぶんけど」

「たく、素直に喜べよ。家族だとかそんなしがらみ無しに、リオを愛してるんだから遠慮するな」

昔からそうだった。
凌牙はリオが切望する言葉をいつも言ってくれる。それが仮令世間に背くものだとしても、凌牙は受け止める気でいるのだろう。
凌牙の言葉がとても嬉しくて、リオはこのまま幸せな時間で時が止まってしまえばいいのにと頭の片隅で思い、ひゅ、と息を止めた。
「……っ、」

「……だから、俺だって誘い文句の一つくらい言えるんだぜ?」

肩口からそうっと顔をあげ、凌牙を見れば声とは裏腹に凌牙は目元を赤らめそっぽを向いていて。羞恥心に耐えるような表情に、リオは思わず兄をじっと見つめてしまう。

「凌牙照れてるの?」

「違う……恥ずかしくなっただけだ」

「あーもう!」


兄の言動に胸が高鳴る。自棄になったらしい声を出し、リオが凌牙の背に腕を回して、ぼすんとソファへ倒れこんだ。
やがて葉が擦れるように軽く笑う凌牙に、リオはの片方の眼からは嬉しさからか涙が零れ落ちた。



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