凌牙は、璃緒にとって自慢の兄だ。

双子だからか、お互いの幼い時期の思い出はほぼ同じものであり、璃緒の見てきた世界は凌牙が見た世界でもあった。二人でカードを選んだ小さなカードショップや迷子にならないよう手を繋いだ夏祭り。互いの記憶の中の二人はいつも笑っていた。

まだ十にも満たない幼い思い出では同じだったが、成長するにつれ、互いの見るものは段々と違っていく。
凌牙は『兄らしく』あろうとして。璃緒は『妹らしく』なりたくはなくて。幾度も喧嘩をして二人の得意分野であるデュエルで決着を着けた。中々兄には勝つ事は出来ないでいたが、最後にはやはり、凌牙が折れる。そうして璃緒がご機嫌になれば、いつもしかめ面が多い凌牙は呆れたような笑みを浮かべながらも満足そうな表情をするのだ。

とどのつまり、なんだかんだで凌牙は璃緒に甘い。

璃緒の元気が無い日があれば、凌牙が作るその日の夕食は璃緒の好きなメニューになっているし、愚痴や弱音だって凌牙は何も言わずに聞いてくれた。
璃緒は、『妹らしく』あることは嫌だったが、凌牙に甘えることは嫌ではなくて。寧ろ凌牙の雰囲気は安心できるし、とても好きなのだ。
凌牙もその辺りを理解しているのだろう、喧嘩はよくするけれどもその後の璃緒の機嫌の取り方は熟知しているし、何よりも無意識に璃緒を大切に思っている。

だからと言って、凌牙へ妹をどう思うか訊けば、生意気なヤツだと当たり前のように返される。その癖、璃緒が誰かに泣かされたとくれば、怒りの切っ先を泣かせた人間へ倍返しでお見舞いしていく。
生意気だと言うのに、妹が大切で放って置けなくて。矛盾した言動をとりながらも、凌牙の本心は間違いなく璃緒が心底大切なのだろう。


そうして、璃緒の怪我も癒え晴れて学園へ毎朝共に通学する神代双子が見られるようになった今日この頃。

「シャークって、あれこれ言いながらも兄の鏡のようなシスコンだよなぁ……」

璃緒本人や、人伝手にこうして神代兄妹の話を聞いた遊馬は、ぼそりと呟いた。

『遊馬、シスコンとは何だ?』

隣で遊馬の独り言を聞いたアストラルがふよふよと浮かびながら目を瞬かせる。
シスコンの説明に、遊馬は難しい顔で腕を組んだ。

「シスコンってのはー……、シャーク妹になんだかんだで甘いシャークの事……じゃないか?」

『成る程。シャークはシスコンなのか』

「多分、な?」

アストラルは珍しく遊馬の台詞に深く頷いた。



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