「母さんに、怒られるかな……」

学生が帰路を急ぐ街中を風也は全力疾走で走っていた。こっそり家から抜け出した罪悪感と、これから会える友人との短いながらも楽しい時間への嬉しさが、風也の中でくるくる踊る。
母さん、ごめんなさい。心の中で謝ると待ち合わせの公園へ向かう為スピードを上げた。雑踏の中を駆ければ、噴水が噴き上がる音が徐々に聞こえてくる。目的地はすぐそこだ。


「遊馬くん!」

「おー、風也久しぶり!」

学校帰りらしく、こちらに気付き大きく手を振る遊馬は制服姿だった。近くまで行くと遊馬はにっこりと笑いお疲れ、と言って座っているベンチの隣スペースを風也が座れるよう、荷物を退かし空ける。
ちょこんと隣へ腰を下ろすと、彼は提げていた袋から冷たいスポーツ飲料水のボトルを風也の頬にくっ付けた。結露した水滴がひやりとして熱が上がった身体に心地いい。当たり前のようにボトルを受け取り、はたと首を傾げる。これは遊馬が買ってきたものだ、返さなければ。両手で受け取ったそれを彼へ渡そうとすれば遊馬は手を左右に動かし違う違うと慌てる。

「それ、風也に買ってきたんだって」

「いいの?」

「へへっ、 この後デュエルしてくれるお礼ってやつ」

遊馬もプシュ、と炭酸飲料の蓋を緩め、そして瞳を輝かせた。あまりに楽しげに言うものだから風也も嬉しいような恥ずかしいような……擽ったくなる。新鮮な感情がじんわりと指先まで満たしてくれる。
アストラルが早くお前とデュエルしたいってさっきから煩いんだ、と遊馬は苦笑混じりに自分の背後を指差す。見えない存在に話しかける遊馬は傍から見たら不思議な光景なのだろうが、その時ほんの一瞬空気が揺れ、風也にはアストラルと言う見えない存在の気配が確かにいるのだと感じられた。

「じゃあ、さっそくデュエルしようか」

デッキを取り出し笑うと、遊馬は風也の手を引き満面の笑みで頷いた。
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