もし友人K君がカイトだったら/と言う名のパラレル




屋上の壁際。壁に遮られ風が強く吹きつけないここは、カイトと凌牙にとってデュエルの腕を競うのに恰好の場所だ。教室を抜け出し此処へ来れば、カードを地面に広げデュエルが始まる。いつからかそれは二人の習慣になりつつあった。

「俺の勝ちだな、カイト」

「チッ……今回はデッキを調整したばかりだったからだ。コツは掴んだ、次は勝つ」

「どうだか」

どちらも負けず嫌いな所為か、涼しい顔をした凌牙を見るカイトは悔しさをありありと滲ませた表情だった。どこで何を発動させるべきだったか。凌牙が丁寧な仕草で一枚一枚カードを整えていく様を見つめながら今のデュエルのやり取りを頭の中で思い起こす。勝機必ずどこかに有ったのだと、片づけもなおざりに1ターン毎のカード配置を脳内に描き始めてしまう。

「ん……?」

顎に手を当て思考に耽ってしまったカイトに気付いた凌牙は、真剣に考え込む姿に仕方ないと肩を竦めた。デュエルが関われば全力で臨むのは凌牙もカイトも同じだ。負ければその原因を探るし、次こそは勝ってやると思う。その考えが似ているから、二人は他とは違う饒舌な勝負が出来る。
親友と言う位置づけではなく、かと言って友人で占めてしまえるものではない――良き好敵手が今のところしっくりきていた。とはいっても双方とも互いの位置づけなど全く興味はないのだが。互いの策略がどれほど通用するのか感じ取れれば十分で、満足だった。

「カイト、いい加減戻ってこい」

「!」

じっとしたきり動かないままのカイトの頭を小突き、凌牙が呆れたように笑う。カードはいつの間にか考え込んでいる内に綺麗にデッキに整理されている。凌牙は意外と世話好きだと知っているカイトはそんな行為に少し擽ったい気分になった。

「次は俺に勝てそうか?」

「凌牙に遅れを取る程弱くはないからな」

そう軽口を言えば調子に乗るな、とカイトは頬を抓られた。

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