最終回後妄想/気分的に遊アス




「んー」

「?どうした、遊馬」

春麗ら。鶯が囀ずる桜並木通りを歩きながら遊馬は珍しく難しい顔で唸っていた。
その隣を漂うアストラルは、彼の表情に目を瞬かせる。
変わらない日常が戻りつつあった。

世界は、一時の平穏を取り戻した。
バリアン世界を受け入れたアストラル世界で時折問題が起こることもあるが、アストラルと遊馬達が成したヌメロンコードの書き換えのお陰だろう、大事にならずに問題は解決に向かう。
なにより、アストラル世界と人間界を結ぶ技術をフェイカーやバイロンが実現化させた事で、またアストラルが遊馬と暮らせる日々を送れるようになったのだ。定期的にアストラル世界に帰らなければならないが、こうして遊馬の隣を歩けることがアストラルにとって幸せなのだった。


話は冒頭に戻る。
何やら真剣に考えている遊馬の姿に、アストラルは珍しさの中に彼も成長したのか……といった感動も見出だしてしまう。
何を考えているのだろうか。デュエルのことか、勉強の事ならなおよし。

「今度の連休さ、どっか行かね?」

「は?」

……そんなアストラルの思いは儚く散った。呆気にとられたものと、理解しかねるといったものが混ざった声を溢してしまうが、提案者である遊馬は何処にしようか、とアストラルの意見を無視してプランを立てる気満々だ。

「遊馬。急にどうしたんだ」

「急って……。前から考えてはいたんだけどなぁ。言うタイミングがなかっただけで」

タイミング、と遊馬の言葉を鸚鵡返しし、アストラルは更に首を捻る。何故といった顔をするアストラルへ、遊馬はそろりと視線を泳がせながら気恥ずかしげに頬を掻いた。

「ほら、遺跡のナンバーズを探す旅の時に色んな場所に行っただろ?でもあの時はナンバーズが最優先で、旨いもん食ったり普通にデュエルするなんてしなかったからさ、折角休みがあるんだし楽しいことに使わなきゃ損だって!」

「なるほど。確かに君にしては魅力的な提案だな。だが、君と私の二人きりの遠出だとしても私は多人数の人の目には見えないのだから実質独り旅になるぞ」

「う……そこまで、考えてなかった……」

「シャークやカイトを誘ったらどうだ?」

保護者として、と付け加えれば、遊馬は酷ぇ!と笑う。
風に舞った桜の花弁が遊馬とアストラルの間を心地良さそうに撫でていく。

「あ。じゃあさ、ちょっと遠出したとこで開かれるデュエル大会とか、出てみようぜ。これなら保護者はいらないし、俺とアストラルで優勝も夢じゃないよな」

「デュエル大会か。それは……いい案だな」

「だっろー?大会前にカードショップとか寄ってさ、あとはロビンの映画が今やってるから、それも見たり」

「ふむ。君は退屈だろうが、プラネタリウムや水族館も行ってみたい」

「そういや、行ってきたってこの間カイトとシャークが言ってたよな。よっしゃ、そこにも行こう!」

からからと遊馬が笑い、楽しみだなぁと呟く。
満面の笑みをした遊馬の横顔を見ていると、目の奥がじわりと熱くなった。何の柵もなく、外の世界へ他の誰でもない、遊馬と行ける。その事実がどうしようもなく嬉しかった。

「遊馬」

「うん?」

「……わたしも、楽しみだ」

アストラルはふわりと身体を撫でる花弁の風に柔らかく言葉を乗せる。
遊馬の瞳に映るアストラルは、幸せを噛み締めているかのように見えた。

「おう。へへっ、この先も楽しいこと、いっぱい見つけていこうぜ」

「ふふ、君となら何処までも着いていこう」

ひらひらと揺らめく淡い桃色の雨の中で、明るく笑い合う互いの姿は希望に満ちている。


*
二人の関係はずっと続くのだと思います。
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