学バサ設定


「左近、貴様は犬みたいだな」

「へっ?」

目についた左近の首もと。己より幾分も健康的な色合いをした其処には犬猫がしている首輪に似た装飾品が巻かれていた。美錠でしっかりと留めてあり、通学路で尾を揺らし自適に暮らしている飼い猫を思い出す。
そうした事を思いながら左近の首輪(これ以外の名称が浮かばなんだ)を人差し指でくん、と引っ張る。何を慌てたのか、左近は私の名を呼びながら縮まった距離に一人焦った声を出していた。

「み、三成様!これ、お洒落ですから!ホンモノの首輪じゃないっすよ!」

「……む。刑部が貴様にくれてやったものかと思ったのだが」

「いやいや。三成様からそんな事言っちゃったら、本気でもっとゴツいやつ付けられますからヤメテクダサイ」

つまらん、と指を離せば何故だか目元を赤らめる左近の姿があった。心臓に悪い、と微かな声で言葉を落としてそろりと首輪を撫でている。

「あの、三成様」

「?」

「そんなにコレ、首輪に見えます?」

眉を八の字にし左近が訊いてくる。その声は刑部が私の世話を焼くときと同じ音を持っていた。
だからどうした、と言うだけで、僅かの間を置いて左近の問い掛けに首を縦に振る。そうすれば左近はうーん、と珍しく悩むように腕を組む。

「なら、タグも付けます?表に狂犬チューイ、裏側に飼い主は三成様ーって」

賽の目が揺れたかのような心底楽しげな笑みで、カラカラと左近は冗談なのか本気なのか判らない提案を口にする。
にひひ、などとだらしのない声で笑うものだから怒る気も失せた。

「くだらん。名など記さなくとも、貴様は迷わず私の後を着いてくるだろう」

己の知る左近とは、そう言う男だ。





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