短編 | ナノ

まわりから見たら恋人同士



なんでこんなにも心臓が早く脈を打つのか。

野球ボールをグラウンドの端で磨いていると、突然伊佐敷が来て手伝う。そうぶっきらぼうに一言いい放った。
いいよ!といったのに伊佐敷は無視。
そして伊佐敷は私の隣に座り込んでボールを磨き始めた。

沈黙が私と伊佐敷を包む。

とくとくと鳴る心臓の音が伊佐敷に聞こえてしまいそうで、…しょうがないじゃないか、好きな人と2人きりなんて話をしなくても緊張するもんだ。

「あのよ、山田さ俺の事、その…どう思ってんだよ」

沈黙を破った言葉にドクンと脈が鳴る。
どう、とは?
私の気持ちがばれてしまった?私が伊佐敷をずっと目で追っていたのがばれてしまった?
ぐるぐると血が巡る。

「……え、と…?」

私の喉からはか細い声が出た。

ボールを磨いていた手を止めて伊佐敷は私を真っ直ぐみつめる。
そんな目で見ないで、
とくとくとくとく、何時もよりも数倍心拍数が上がって息が苦しい。

「だから、どう思ってんだよ」

少し苛立ったような声。
それでも少し縋ったような声色が混じっていた、気がする、ようなしないような。
……いけないいけない。
自分に都合のいい風に解釈をしてしまいそうになり思考をもどす。

どうって、なんでそんな事聞くの、やっぱり私わかりやすかった?
小湊兄にも暴露てたし、貴子にも……。
どうしよう、どうしよう、

「おい山田!」

ボールがコロコロ転がっていく。
その音にハッとして私は、私なりの精一杯の気持ちを伝えていた。

「っ、えと、うんと、格好、いいとおもう!」

うあぁぁああ!
いった!いってしまった!!

ちろり、と伊佐敷をみると顔をぶわ!と赤くしていて「……ん、」と何故か満足そうに頷いていた。

え、なんでそんな顔……?

「…よかった」

私と目線を合わせて伊佐敷は大きな手で私の頭を撫でて来た。
顔に似合わず優しく私の頭を、ぽんぽんと。

その行為に私もぶわ!と顔に熱が集まってきて、伊佐敷と同じ反応をしてしまった。

「……ん、」

「俺お前に嫌われてるかと思ってたから、よかった」

ニカッ。
とキラキラオーラ満載な笑顔。御幸君とかが得意そうな綺麗な笑顔を魅せられて私の胸がいっぱいになる。
嫌うなんて!むしろ!大好きっ!
言えないけど心の中で叫ぶ。

「あ、ホラ!ボールちゃっちゃと磨くぞ」

転がっていたボールを手に取ると伊佐敷はまた地べたにボールを座り磨きはじめた。
伊佐敷の手の感触がまだ頭に残っていて、伊佐敷に撫でられて(正確には磨かれて)いるボールが羨ましい。

ボールになりたいなんて思う日がくるとは………。

とりあえず私の気持ちはまだ暴露て居ないようで、一安心。
それと共に脈がある気がして私は小さくガッツポーズをした。




(あれで付き合って無いとかムカつくよね)
(亮介覗きは良く無い)



実は哲さんにも暴露てました。



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