あめ


むっとした顔で、いつも口にしているものと違うものを食べながらテニスをしているその先輩は随時と機嫌が悪いようだ。

「丸井先輩、どうしたんですか」
「…」

いつもは割とフレンドリーな丸井先輩も、今は副部長のような目つきで俺を睨んでくる。


「赤也」
「仁王先輩〜…」

普段は鬱陶しく思える仁王先輩も今は天使に見える。いや天使には見えないけど。ここぞとばかりに訳を聞いてみようとすると尋ねる前に仁王先輩は話してくれた。流石詐欺師!ん?これ詐欺師関係なくね?

「ブンちゃんはいつも食べてるガムがなくてのう、ご立腹なんじゃ。」
「な、なるほど…」

代わりに食べられているであろう棒つきキャンディはガムにするように何回も噛まれ、バリバリという音がそこら中に響いた。

「どこに行っても売り切れらしくてのう、あの通りブンちゃんは使いものにならんし、とうとう幸村が買い占めたやつの捜査を参謀に頼んじゃから…。犯人はご愁傷様じゃな…」

遠い目をしてはなす仁王先輩はこの際置いておき、俺は今の言葉でいっきに溢れ出した汗を拭きながら部室へ急いだ。

ほんのイタズラだったのに…!
とりあえず、俺のかばんにたっぷり詰まったガムをどうやって始末するか考えよう。



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