おめでとう


聞いたときはびっくりしたけれど、今は全く驚かない。
まあ確かに嘘っぽいけれど。

しかしこの男、やってくれた。

「え?金ちゃんが今日誕生日?そんな見え透いた嘘つくなや〜」

あははと笑って金太郎の頭を優しくたたく、ひよこみたいな色した髪の毛の男。頭の中もひよことおんなじやな。

「ひどいわ、謙也…!」

大きな目を潤ませ、声を震わせて走っていく金太郎。
ほんまにめんどくさいわー。
手に持っていたラケットで制裁の為に謙也さんの頭をどついて俺はため息をつきながら金太郎の後を追っていった。

「金太郎ー」
「ひ、光ぅー!」

ぐずぐずと鼻をならしながら金太郎は大粒の涙を地面に落としていった。

「…誕生日おめでとうさん。今年で何歳や?」
「…?じゅ、じゅうさん…」

不思議そうに答えながら涙が溜まっている目を思い切りこすったせいか、目は真っ赤になっていた。

「せやな。13や。もうすぐ後輩も出来んねん。泣いとってええんか」
「な、泣いてへん!」


派手な柄の服の裾で顔を拭いた金太郎は太陽のようないつもの顔で笑ってみせた。

「じゃあ戻ろか」
「うん!」

ぎゅう、と手を握り部室に戻る。ドアを開けた瞬間クラッカーの音と火薬のつんとした匂いが俺らを襲った。

「う、わ」
「金ちゃん誕生日おめでとうな!」
「俺が金ちゃんの誕生日忘れるはずないっちゅー話や!はい、プレゼント」

は、ちょお、どういう意味。
さっきまで繋がれていた手はとっくに振り切られ、泣いていた張本人は別の意味で泣きそうになっていた。

「敵を欺くにはまず味方から、ってな」

そうぼそりと呟いた部長はむかつくからとりあえず蹴っといた。



happy birthday金太郎!

20120401

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