雪だるま
大阪に雪が降った。
「すごいなあ」
弟はぽかんと口をあけて窓を眺めている。俺はというと、朝練のためにトーストを必死にかじっており、雪どころではなかった。
素早く支度を済ませ、行ってきますの挨拶もほどほどにいつものように足を踏み出した、そのときである。
「金ちゃん?」
「あ、謙也やーん!」
ニコニコと、屈託なく笑うのは一年と遠山金太郎だ。三年生は引退をしたはずなのだが、受験も決まった今めいめいが部活に参加している。
なんとなく義務的に行っているだけで、もちろんきていないものもいるのだ。
「今日朝練くるん?」
「せやで。ちゃんと財前にもメール送ったしな!」
返事はこなかったが、という一言は飲み込んで、並んで雪に足跡をつけていく。
さくさくさく。
「気持ちえーな、この音!」
「やな〜。あ、雪だるまつくろか」
「雪だるま!?めっちゃ作りたい!」
小さい雪だるまでいいからな、というと俺が体で金ちゃんが頭という役割分担まですぐに決まった。
他人の家の塀に積もった雪の上を転がして雪だるまはかさを増していく。
「謙也ぁ、できた?」
「バッチリや!」「じゃあ合体させるでぇ!」
せーの、のかけ声で思い切り振り下ろされる雪玉、それに伴って真っ白になる俺の制服。
「下半身……破裂してもーたな」
「金ちゃん力強すぎや…」
あと、思い切り雪玉ごと叩きつけられた俺の手もめっちゃじんじんしてんねんけど。