サンタさん
「金ちゃん、サンタさんになにもろた?」
部活の合間、試合を金ちゃんと二人で観戦していると、ふとこの間のクリスマスパーティーのことを思い出した。
パーティー自体は部室でケーキやチキンを食べたりゲームをしたりとささやかなものだったのだが、そのとき金ちゃんは嬉しそうにクリスマスプレゼントの話をしていたのだ。
だから、サンタさんに何か貰ったとでも思って、こういう質問にいたった訳である。
「サンタさん?白石まだサンタさんなんか信じてんのー?」
「えっ」
ぴしり、と体が固まった…気がする。
屈託なく笑う金ちゃんは冗談でいったわけでもなく、本気でサンタさんを信じていないようだ。あの無垢な金ちゃんが!
こんなことがあっていいものか。金ちゃんは既にラブルスの試合に夢中になってしまっている。金ちゃんに、どうしてもサンタさんを信じさせなければいけない。
「金ちゃん、ごめんな」
「へ?ぐはっ」
思いきり毒手で金ちゃんのみぞおちに一発くらわすとらラブルスと試合をしていた謙也がスピードスターにふさわしい勢いで走ってきた。
「ちょっ白石!?どしたん!?気でも狂ったん!?」
「…金ちゃんが、サンタさん信じてないって…」
「え、それで犯行に至ったん?」
「ちゃうわ!」
部室まで金ちゃんを運び、長椅子に寝かせた。顔を真っ青にしながらうなっているところをみると少しかわいそうな気もしたがしょうがない。
これだけは譲れないのだ。
謙也を無理やりパシらせ、完璧にラッピングして金ちゃんの頭の横にそっと置いてやる。起きたときの金ちゃんの反応がとても楽しみだ。
「で、ここまでする必要あったん?」
「……むしゃくしゃしてやった、今は反省している」
「お前は最近の若者か!」