はさみ
「あ」
筆箱を覗くとお目当てのものが見つからず、キリトリ、とかかれた紙はマヌケな音をたてて地面に落ちた。
「どうしたんじゃブンちゃん」
「ハサミ貸してー」
こいつに頼むのはすっげえ不本意だが今は仕方がない。仁王はハンカチやティッシュはもちろんリップや鏡まで完備しているから持ってないことはないだろう。
「あれ」
しょうがないのーといいながら自分の小さい筆箱をでかい図体でガサガサやってるやつをみて思い出す。
そういえばこいつ左ききだったな。
「お前のハサミ左きき用じゃん。もういいや山田貸してー」
「大丈夫じゃ、ブンちゃん。俺ハサミは右じゃ」
「そうなの?ごめん山田」
せっかくハサミを取り出しかけていた山田に謝って仁王のハサミをうけとる。ほんとだ右きき用だ。
「俺はチョークも右じゃしつまようじも右、ボール投げるのも右。ラケットは左で鉛筆と箸も左じゃな。あとものさしは右。」
「細かすぎだろぃ」