食べたい





「カレー食いたい」


携帯をいじりながらぼーっとしていた仁王がいきなり声をあげた。

「は?」
「あかん食いたい」
「いきなりなんだよ」


ちなみにここ、仁王の家ね。時刻はお昼前、太陽が真上に昇って屋根やら地面やらを照らす頃だ。
窓越しに見る地面は陽炎が出来ているのかゆらゆらと揺れていた。


「じゃあ食べに行く?」
「俺クーラー依存症じゃけ、今出たら確実に死ぬ」

…じゃあどうしろっていうんだよ。

「幸村、作って」
「まあいいけどさあ」

フローリングに寝そべる仁王をとりあえず蹴って、キッチンに向かう。
すると後ろから仁王がだるそうについてきた。


「なんだ、寝ててもよかったのに」
「今俺の気持ちはカレーでいっぱいなんじゃ」

ちょっと意味がわからない。
えっと、カレーってどうやって作るっけ…と思考を巡らせてみてもなかなか出て来てはくれない。
もう適当でいいかな。どうせ仁王が食べるんだし。

とりあえず、鍋に水をはって火にかける。蓋をしてカレーにいれる野菜を選ぶ。冷蔵庫を漁っているとやはり仁王が後ろから顔を覗かせ、野菜はいやじゃといった。


「まずその前に野菜室に野菜なにも入ってないんだけど」
「じゃって食わんもん」
「じゃあ何いれるの?」
「肉」
「…あったかなー」


仁王の冷蔵庫の中身熟知してる俺怖い。まあ熟知ってほど食材は入ってないんだけど。
思った通り、冷蔵庫には卵が数個と麦茶、それからタッパーに詰められたご飯だけだった。


「これだけで何を作れって」
「神の子なら大丈夫じゃ」
「全然大丈夫じゃねえよ神の子なんだと思ってんの」


まあカレー粉いれといたら大丈夫かな。
並々はいった水にカレー粉を一箱突っ込んでおく。あとはお玉で適当に回せば…。


「はい出来たよ」
「……え?これ、え?」
「早く食べなよ」
「俺カレーライスが…」
「ライスならはいってるよ」

ルーが多すぎて見えないけど。仁王は渋々鍋のカレーをお玉ですくって食べ…飲んでいる。


「もう幸村には料理させん…」
「お前がさせたくせに言うなよ」


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