すいか


しゃくり、と音をたてたみずみずしい果肉はよく味わう暇もなく舌に溶けていった。
続けて何口かかじっていくとすぐにすいかは皮だけになってしまった。

…俺はこんなにも一口が大きかったか?


小さく切ったすいかとて、すこしがっつきすぎたかもしれない。
反省をしながら次のすいかへ手を伸ばす。

庭の真ん中にはまるまるとしたすいかと、それを冷やす水と氷がはいったたらいがあった。

さらに横にもたくさんのすいかが並んでいる。……幸村でも呼ぶか。

広い家を裸足で歩くとぺたり、ぺたりと音をたてながら電話のところまでいく。昔ながらの黒電話に手を伸ばし、ゼロから始まる幸村の番号を思い出しながら回していく。

携帯電話はどうも好きになれなくて、使い方もよくわからないので最近ではめっきりみなくなった黒電話を使用しているのだ。


『もしもし?』
「真田だ。すいかをたくさん戴いてな、よかったら食いにこんか」
『ふふ、なんかおじいちゃんみたい。今からいくね』


おじいちゃん?

幸村の言うことは時々意味が分からない。電話の向こうでガチャリという音がしたのを確認して俺も受話器を置いた。


***


「甘いね」
「今年は出来が良いといっていた」


縁側で二人並んですいかを食べていると昔を思い出す。蝉の音とすいかのしゃくしゃくという音だけが家には響いていた。

「こうしてると昔を思い出すね」
「そうだな」
「蝉を捕まえようっていってさぁ、帽子を構えて木までゆっくり歩いていって捕まえたっていってゴキブリ掴んで帰ってきたよね」
「幸村は海のふちをこちらを見ながら歩いていたな。話していたはずなのにいきなりいなくなって随分驚いたものだ。」
「ただ海に落ちただけだよ。」
「忍者みたいなどと笑っていたがな」


こうして思っていると、幸村ともだいぶ付き合いが長い。


「来年もこうやってすいかが食べれたらいいねぇ」
「そうだな。次はかき氷にでも挑戦してみるか」
「真田かき氷食べたことなかったの?」
「ああ」
「なら今から作ろうよ。みんな呼んでさ」
「…すいかも沢山あることだしな」


ついでに宿題も持ってくるように言おう。

いつか、今日のことがいい笑い話になる日が来るのだろうかと考えると、少し嬉しくなった。

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