シャンプー


「なあ、自分らシャンプーなに使ってんの?」


白石が、部誌に向かいながら言った。濡れた後にはこの部屋のクーラーはいささか効きすぎている。
因みに、ここは部室ではない。いきなり雨に降られ、校舎に避難してきたのだ。金太郎がくしゃみをし、例のごとく白石と千歳がおかんぶりを遺憾なく発揮し、給湯室であったかいのみもんのもか!ということになったのである。


当初の目的とはだいぶずれ、涼しい部屋でのんびりしているのが現状だ。白石だけは風邪ひくからといってクーラーをつけるのは断固拒否したが、雨も降ってじめりとしたこの気候は、除湿なら、と白石を妥協させるのは難しくはなかった。

そしてどこで話が二転三転したのか、今はシャンプーの話である。


「シャンプー?わいはいち髪や!」
「いち髪?」

聞き慣れないシャンプーの名前に顔をしかめる。てか金太郎、ちゃんと自分のシャンプー把握しててんなぁ。

「ああ、知っとるたい。みゆきが使っとったばい」
「じゃあ女の子用やん」
「?よおわからんけど、おかんの一緒につかってんねん!」

みゆきというのは確か千歳の妹。口々に言葉を並べる彼らの手には、先程小春がいれてくれたココアがあった。俺も大事にちびちび飲んでいる。

「千歳は?何つかってんの」
「俺は寮のシャンプーたい!何してもふわふわになるち、特にこだわりばなかとよ」
「天パやもんなぁ」


今日みたいな雨の日はよく広がって大変たい、と笑う千歳はそれすら楽しいのだろう。俺も、バンダナをまいている髪の毛を触る。ワックスというのは大変便利である。

同じ寮にはいっているからか定かではないが、銀には誰も話を振らず、財前は?という局所に着陸した。

「俺は、メリットっすわ」
「メリット…」

ざわざわと小さな給湯室に波紋が広がる。なんかもっとお洒落な感じの使ってるイメージあってんけど…。

「なんすか。甥とおんなじの使ってるんすわ」
「なるほどな」

財前はぎろりとみなを睨む。謙也が、さらさらにはなるよな、とか意味のわからないフォロー(といえるのだろうか)をいれ、謙也への風当たりがきつくなったころ、小春が口を開いた。

「ワテはエッセンシャルやでっ」
「え、小春どこでシャンプーするんー?」


ああっ金太郎それ一番ゆうたあかんやつや!

しかしそこは優しい小春、ニコニコと笑っている。俺が言ったら確実に怒鳴られるのに。


「小春も女もんやなぁ。」
「そういう白石はなんなん」
「……パンテーン」
「女もんやん」
「しゃあないやろ、妹ら使ってるし」


どうやら多数決で決まるらしい。

「謙也は?」
「俺?ザ・シャンプーってやつ」
「あの高いやつか」


流石ボンボンは違う。みんなで嫌みをいって一通り謙也をからかったところで、ユウジは?ときかれた。

「俺はマシェリやで」

お〜流石お洒落やな!という声が様々なところで聞こえた。いやあ、まあな。

「ええ、いち髪のほうがええやん!」

そして、金太郎のこの一言で、どのシャンプーが一番かという戦いの火蓋が落とされたのである。



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