金環日食
「金環日食みようよ」
唐突に変なことをいうのは幸村のくせのようなもので、半ばあきれていた。
しかし朝五時に電話してくるのはどうかと思う。
眠たい目をこすりながら、何時?と問う。
幸村は自分のしたいことを何が何でもする。何が何でも、だ。
あの真田さえもかなわないのでみなもう諦めている。なんだかんでいって楽しいときもあるし、結構いい関係なのかもしれない。
「7時に部室集合ね。じゃ、赤也に電話かけるから」
「んー」
電源ボタンを押して通話を終了する。
名残惜しいが布団をあとにして顔を洗いにいく。
7時か…結構あるのう。
それからだらだらと過ごし、ちょうど7時につくように家を出る。
歩くのが早かったのか7時少し前についたのだがもうみんな揃っていた。
「遅かったっすね!」
「お前もさっき来たばかりだろう」
「はいはい、静かに」
幸村がそういうとまわりは水を打ったように静かになる。
まわり、といってもここにはレギュラーしかいないのだが。
「誰か、日食グラスもってきた人いる?」
「あっ、俺3Dメガネもってきたッス!」
映画館でよくみるあれを赤也は笑顔で幸村に差し出す。赤也、みてみんしゃい。あの柳生の憐れみの表情を。
「じゃあ赤也はそれでみるといいよ。目潰れてもしらないけど」
「ちょっそれ先いってくださいよ!」
結局、日食グラスをもってきたのは幸村と柳生と参謀だけじゃった。
「じゃあ他のみんなは肉眼で見てね!」
あれ、レギュラーのぶんもってるとかじゃないんか?