窓から


「寂しいな」

幸村くんがぽつりと呟いた。
病室で、窓のほうを向いて言ったから表情はわからなかったがきっと無表情なのだろう。

「俺も、幸村くんが部活にこなくて寂しい」

思っていることをそのままいうと、くすりと笑った幸村くんはこっちを向いた。

「そっちじゃなくて、ほら」

幸村くんは窓の外を指差してにこりと笑う。
へ?と間抜けな声をだして窓を覗けば、青々しい葉っぱが生い茂っていた。

「なんで?」
「花はもう散っちゃったんだ。」
「…あー…」

たしか、春にみたときはもっときれいだったと思う。風に吹かれてせわしなく揺れる葉っぱを見ていた幸村くんの顔は優しい表情をしていた。




「…ほう」
「で、なんかしてやりてぇんだよぃ」

とりあえず仁王に相談してみた。

「じゃあ花を咲かせましょーよ!!」
「うわ、赤也!?」

いきなり出てきて笑顔でそういった赤也は自信満々だった。


「…ええかもしれん」
「は!?仁王本気か?」


どうやるんだよぃ、といえば気持ち悪い笑顔で任せんしゃい、といってきた。任せたくねぇな。

「ほれ、」
「なんだよぃ、これ…」

花びらがいっぱいつまったザルを机に叩きつけ、仁王がどや顔でこっちをみてきた。
部活サボってどこかにいってると思ったらこれ集めてたのかよぃ…。ちょっと見直したぜぃ。

「花屋のお姉さんがいっぱいくれたナリ」

見直して損した。
純粋な赤也はすごいッス!なんていって褒め称えていたが。

「じゃあ、いくぜよ」
「おう!」

所かわって、病院の屋上。柳に計算してもらい、ちょうど幸村くんの病室から一番きれいに見える位置にいる。

「さん、にー、いち!」

赤也のかけ声でザルが逆さまになり、大量の花びらが風にのってとんでいく。

赤いもの、ピンクの、オレンジのもの…。
全てが混合し、ちょうど木に引っかかったりしてちゃんと花がさいているようだった。春に花を咲かせていたときより綺麗に色づかせていて、それは目を疑うような素敵な光景だった。

幸村くん、早く復帰しろぃ!



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