おはなみ
「150円です」
仁王に花見に誘われ、近所の公園でちらほら咲き始めた桜を眺めていたら仁王がラムネを渡してそういってきた。
「奢ってくれないの?」
「まあそれでもいいんじゃけどな」
溢れないように玉押し(というらしい)でビー玉を下に押すとしゅわしゅわと爽快な音がして炭酸がはじけていく。
暖かい日差しをみながらラムネを煽る。よく冷えたそれは口の中をひりひりさせながら喉を通っていった。
「で、なんで俺をつれてきたの?」
その辺りのベンチに座って仁王に問いかけると仁王はビー玉をからからとならしながら答える。
「ブンちゃんや赤也じゃと花より団子っぽくなりそうじゃしのう…」
「ふうん?」
「それに」
仁王は喉をならしてラムネを飲む。瓶についた水滴が滴りまるで夏みたいだと感じた。
「高校生活最初の春の思い出作りっちゅうことじゃ」
「ラムネを飲んだことが思い出ねぇ…」
「あ、幸村これ」
「ん?桜?」
仁王にいわれて空になったラムネの瓶を覗けば、ビー玉で見えにくいがそこには確かに小さく綺麗な桜の花が瓶の底を陣取っていた。
「和むのう」
「そうだね…」
もうすぐ、夏がやってくる。
じわりと額に滲んだ汗を拭い、またラムネを飲んだ。
「まあ汚いから捨てるんじゃがな」
「容赦ないなお前」