洋服


「ちょっ副部長、なんで俺がっ」
「む、こういうのに詳しいのではないのか」


先ほど、副部長からお呼びだしの電話がかかり恐る恐る待ち合わせ場所にいくと、暑苦しい副部長と涼しげな顔の部長がたっていた。

そのまま連行されてついた場所は近所の服屋。

「幸村はこんな呉服店で服をかっているのか…」
「ご、ごふく…?」


これから戦場にいくような険しい顔をした副部長は厳かに店へと足を踏み入れた。
部長によると、夏物の服が欲しいから俺と副部長についてきてもらったらしい。

いやそこは丸井先輩とか仁王先輩とかでしょ!?
なんで副部長と俺!?

そう部長に尋ねると、副部長も服が欲しかったらしい。そこで都合がいいのが俺だった、というのだ。
俺すっげえいいように使われているな…。

「んで、どんな服が欲しいんスか?」


「うむ、夏に向けてだな、清楚でありながら洒落っ気を忘れぬ服が欲しい」
「俺はね、赤ふんっぽい服が欲しいな」


……。
絶句。
その一言につきる。
副部長はなにやら恥ずかしげに顔を赤らめながらいうし、その横で部長がニコニコと笑いながら佇んでいる。
部長は完全にふざけているだろ!赤ふんっぽい服って何だよ!というツッコミも絶対スルーされることはわかっているから何もいわずに、ただ頷いた。


「夏…でしたら青い服ですかね」
「ねえねえ赤也、俺の赤ふんっぽい服は!?」
「知りませんよ!!」
「何いってるの赤也、今ここで赤也のお洒落心を試さなきゃどこで試すんだい」
「試さなくていいですよ!!」

絶対ふざけている。
むしろふざけていなければ困る。今日の部長はおかしい。

副部長はいつものように怒鳴ったりはせず自分の好みの服を一生懸命探していた。

「まったく、なんでこんな…」
「まあまあ、真田ももうすぐ引退するから赤也と遊びたかったんだって」
「…え」

あの副部長が、おれと…。

「赤也、これはどうだ!」
「…あー」
「真田っこれ試着!試着してみて!」
「俺がこんなにフリフリの服をきるのか!?」
「着るよね?」
「あ、ああ…」


いや、絶対部長が俺と副部長をからかいたかっただけだ。

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