髪の毛


「仁王の髪の毛何かいい匂いするよね」

幸村くんが俺の持っている箱から一つムースポッキーを取り、それをかじりながら言った。

「…そうなの?」

口の中にあるムースポッキーを噛まずにじっくりと溶かすと口内にいちごの甘い味が充満する。

「そうだよ。あれワックス?」
「当たり前だろぃ。ワックスでもなきゃあんな髪の毛たたねぇだろぃ。」
「…そうまでしてなんで立てるんだろうね」
「そりゃあ、まあ…お洒落?」
「そんな事よりもっと食べればいいのにね」
「ガリガリすぎで細いよな〜」
「いやお前は太りすぎ」

幸村くんの辛辣な言葉に傷つきながらも口を休めることなく動かす。
別に後で運動するし大丈夫だろぃ。


「で、仁王なんだけど」
「まだ続いてたのかよぃ…」

話を続ける幸村くんにポッキーの箱を傾ければ丁寧に戻された。

「いや、ワックスなら俺もほしい!」
「えっツンツンにすんの?」
「馬鹿だろ」

フワフワの髪の毛を引っ張りながら幸村くんは俺の足を踏む。幸村くん見た目によらず力強っ!


「俺って癖毛じゃん?雨の日とか大変なんだよ。だからあんな強度なワックス欲しい」
「赤也のワックスは?」
「えっあれワックスなの」

俺も最初はびっくりしたがあれは仕様らしい。毎朝セットしているときいた。

「おー二人とも何してるんじゃ」

俺にも一本、と箱に手を突っ込む噂の仁王。
そうして頭を屈めた所で丁度いいと思い髪の匂いを嗅いでみる。

「…フルーティーな…」
「でしょ!?」
「は?」


顔をしかめながらそういうと幸村くんが首を縦に何回も振って頭を撫でてきた。
唯一現状が理解できず不思議そうな仁王は自分の髪の毛を手で何回かさすった後、その手をくんくんと匂う。

「そんな俺のシャンプー匂うかのぅ」
「シャンプーじゃなくてワックスだろぃ」
「そうそう、それをきくんだった」

はて、と首を傾げる仁王についていくさらさらの俗にいう、尻尾。

「俺、ワックスは使ってなかよ?」


ボコボコにされた仁王は置いておき、赤也のワックスの種類を聞きにいった幸村くんの後を俺はポッキーをかじりながらついていった。

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