いたずら


「終わった?じゃあ次はブン太ジャッカルペア、仁王柳生ペアでダブルスしてね」

幸村にそう指示をだされ、コートに入る。
今は暑くもなく寒くもなく丁度いい気温なのだが、動いたら暑くなることは明らかで先ほどまでぬくぬくとしていた日向が恨めしく思う。

「仁王くん、大丈夫ですか」
「やーぎゅ…。動きたくないぜよ…」

さんさんと照りつける太陽を一睨みしてラケットを握った。

爽快な音をたててボールは俺らの間を行き来する。柳生がレーザービームをうつとジャッカルがそれを拾い、悠々とガムを噛んでいる前衛にかえす。
妙技とかなんとかいっとるけどまーくんはかえせるんじゃよっと。
綱渡りという妙な技も楽々かえして暫く激戦が続く。

額に滲む汗を拭う。暑さのせいか視界が定まらず、地面が揺れる。

「仁王くん!!」
「っ!!」

斜めに勢いよく来たスマッシュをとろうと地面をおもいきり蹴った。

無事ボールを返しふと気付くと目の前に鉄柱…!!ずがん、と大きい音がしてその瞬間に激痛が俺を襲った。


「に、仁王くん!!」

ボールは向こう側のコートにはいり、ころころと転がっていった。
柳生が心配そうな顔で向かってくる。

「お、おい大丈夫かよぃ!」
「誰か、救急箱!!」

ブンちゃんがラケットを放って走ってきて、ジャッカルは慌てて部員に叫ぶ。

「大丈夫、じゃ…。試合を…」

激痛に耐えながらそう口にすると柳生におもいきり頭を叩かれた。
何するんじゃ、と文句を言おうと顔を上げると泣きそうな顔をした柳生がいた。

「何を考えているのですか!」
「ぷりっ…」

ずきずきと痛む足を見ればジャージは真っ赤に染まり見てられない。この下はどうなっているのだろうか、と考えるだけて気持ち悪くなった。

「大丈夫か仁王!」
「無事かい?柳生、保健室に連れて行って」
「はい!」

肩を持ち上げられ、なさけない格好で柳生に引き摺られる。サボリ以外でいく保健室はなんだか新鮮だった。
春休みなので先生もいなく、こっそりつくった合い鍵で保健室のドアを開ける。

「…仁王くん」
「なんじゃやーぎゅ。大成功じゃな」
「そうですね」

意地悪く笑う柳生はやはり中学生だった。

(幸村たちにペテンだったなんて言えるわけなか…)
(また暫くペテンですね)

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