方向音痴


新入生はよく迷子になるやつだった。
バスで寝過ごし、俺らが何回迎えにいったことか…。

最初は切原、と苗字で呼んでいたのが季節を重ねる事に仲良くなっていき、今ではみんなに赤也と呼ばれるほどだ。

まあ、まだあいつが入ってきて一年しかたっていないが、来年もこのメンバーで全国優勝したいなという気持ちが日々強まる。

そのためにより強豪なチームと戦わなければいけない。
俺らに釣り合うテニスチームなどそうなく、あったとしてもだいぶ遠い所だ。そうなると集合時間も早くなり、赤也は寝坊し、一人違うバスにのりさらに寝過ごす、ともう一種のお約束になりつつある。

例によって今日も赤也の迎えに誰がいくか、という相談になっていた。
すると、今まで一度も行ったことがなかったあのお方が厳かに手を上げた。

「俺いきたい!!」
「し、しかし…」

結局幸村くんに適うわけもなく、真田が代理の部長としてこの場を仕切ることになり、幸村くんは赤也を迎えにいった。

と、ここまではよかった。しかし数十分がたっても二人が戻ってこない。
「遅くないか?」

柳がそういったところで丁度幸村くんから電話がかかってきた。

「あっ幸村くん!!今」
『今俺どこにいるの?』
「それを今聞こうと思ってたんだよぃ…」

聞くと赤也とも合流できていないらしい。
すると後ろで真田の声がした。

「そういえば精市は方向音痴だったな…」
「それを早くいえ!!」

結局二人が帰ってきたのはすっかり日も暮れて練習試合が終わった頃だった。

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