パーティ会場
『で、どうしてこうなった』
デジャビュ。
さっきも同じ台詞を吐いたぞ、と思いながら◎は頭上から降り注ぐ木片も周りで騒ぐ男たちも気にすることなく着地する。ナツはその隣でさっそく船酔していた。そして誰かにかっこわるいと叫ばれていた。…ハッピーは落ちてきたので優しくキャッチしておいた。
彼らの目の前には、先ほどの少女ルーシィと、朝方見た男、そしてその周りを囲む人相の悪い男たち。
『楽しそうなパーティだな…女一人に貴様らではダンスも務まらんぞ』
「◎、キザ過ぎます…あい」
「あ、あなたたち、どうして…!?」
突如現れた◎たちに、その場は騒然としていた。その中で、男に囲まれながらも目を見開くルーシィを見つめ返し、◎とハッピーは顔を見合わせる。
「ルーシィ何してるの?」
「騙されたのよ!」
妖精の尻尾に入れてくれるって…。そこまで続いたところで、◎とナツの表情が変わる。ハッピーは二人の変化を素早く察知すると、ルーシィの方へ向かった。
「オイラにまかせて!」
『疲れてるところ悪いな…もう少し頑張ってくれ』
「うん!」
もう一度羽を生やした己に驚くルーシィを流しながら、彼女の腹へしっぽを巻きつけて飛び上がる。そのまま、ぽっかりと穴が開いた天井から空へと逃げていった。
「ちょ、ナツとあの人は!?」
「三人は無理」
さて、それを先ほどの男たちがただ見逃すかと言われれば、勿論そんなわけがなく。慌てて魔法を放とうとしたサラマンダー。その近くにいるナツはそれを見て…まだ酔っていた。ちなみに自分に目いっぱいなため攻撃されそうなハッピーたちが視界に入ってもそれに気づいていない。
◎は、その様子を眺め、ナツが使い物にならないと経験上判断したのか、ひとまず一人で片付けるために動き出した。
まず手始めに、近くに落ちていた木片をぶん投げる。
「おぽぉ!!」
クリーンヒット。
サラマンダーの攻撃がハッピーたちからそれた。ナイス◎、とナツが吐き気をこらえながら呟くのを尻目に◎は己に向く無数の武器をいなしながら、未だハッピーたちを狙っていた男たちを蹴り飛ばす。
「ぐもっ!!」「ぶほぁっ!!」
ダブルヒット。
今度は銃弾がそれた。またまたナツがナイス◎。…、と先ほどよりも弱々しい声で呟く。―いいからお前は休んでいろ。 いや、お、おれ、おれも…おぇっおえええっ…! やれやれだ…。 そんな会話を交わす二人に、その場にいた者達は殺気立つ。
「あのネコどもは後だ!ひとまずコイツらを始末するぞ…!」
「コケにしやがって!どうせ片方はひょろい!なんなら奴隷にしてやれ!!」
『ひょろい…?俺のことか』
「そうだ!そこのガキも一緒に連れてってもいいぜ。どうせ酔って何にもならねぇだろ、捕えろ!」
指をさされた◎は肩をすくめる。全身コートで覆いフードさえもかぶっているが、確かにナツよりは線が細かった。とはいえ、男としてある程度の筋肉がついていそうな体つきではあるのだが。
「…あ?◎を、奴隷…?」
『おい、そんな言葉でキレるな。できないことだ』
そんな中ででた言葉に、先ほどまでうずくまっていたナツが反応する。ぴくり、と肩をはねさせて上げられたその顔は、怒りに満ちていた。
―ガァン!!
「ひいっ」
『ナツ、壊すな』
◎は軽く諌めるが、思い切り壁をぶち殴ったナツは止まらない。
「壊さなきゃ…気が収まらねぇ…うっ」
『吐くなよ』
「それも無理だ…」
サラマンダーたちは見た目でしか判断できなかったのだ。
ナツも◎も船ごと破壊できるぐらいには腕力はあった。しかし、ナツは酔い、◎は特に力を見せるつもりもなかったので、男たちをのして帰るか、と軽くかまえていた。それが逆に、非力なように見えていたのだ。
結果、ナツの逆鱗に触れた。
吐き気をこらえながらもゆっくりと立ち上がったナツに、全員が怯える。心なしか彼の背後がゆらゆらと怒気で揺れているようだ。
◎が腕組みをして、呆れた様子でその姿を見ている中、彼は両足で踏ん張って立ち上がると、思い切り拳を振り上げた。
「ぶっ飛ばす!!うっ」『お』
が、次の瞬間、船が大きく揺れる。そのために、ナツは、いや、寧ろ船の中にいる全員が床に倒れる。
◎も例外なく揺れ、ナツの背中にぶつかった。
船が、まるで何かに押し流されるように急激に揺れていた。
「もう無理だ吐く!吐いていいよな!?」
『ダメだと言った止められるのか』
「無理だ!」
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