一緒ならよかったよ



確かにリンがいたはずの温もりは消えていて無機質なシーツが肌を撫でた。
昨日の出来事が嘘のようだ。いや、夢だったらまだましだったのに。


「……姉ちゃんと一線越えるなんてなぁ」

近親相姦、だなんて。手元にシーツを抱き寄せてくるまる。女々しいかもしれないが現実を受け入れる時間が俺には必要だった。







「レ……ンっ! レンッ!」

何度も名前を呼ぶリンは俺が残した所有痕で一杯だった。赤い足跡をところ構わず噛みつくように。そうでもしないと忘れられそうになかった。

荒い息を吐いて見下ろせば潤んだ瞳が目につく。生理的に流れ出たであろうそれを思わず舐めとればリンは僅かに微笑んだ。

「……リン」

甘ったるい悲鳴が喉をするりと滑って流れていく。
呼応するみたいに、それまで俺の名前しか呼ばなかったリンは、初めてその言葉を口にした。

「大好きだよ」

駄目だ。無理矢理してるのは俺なのに視界が歪む。リンは優しい。残酷なくらいに。

「ごめん、姉さん。もう」


姉だなんて思えないくせに白々しい。でも黙って絶望したくはなくて無理矢理に奪ったリンの純潔を見た瞬間に一気に心が冷めた。
何をやっているんだ、俺は。
痛いなんて台詞も全部全部飲み込んで大好きだと伝えてくれたリンは涙を流す俺の髪を優しく優しく撫でた。

「レンは大事な弟だよ。結婚するからって、蔑ろにしたりなんかしないから」

折れそうな、でも暖かい身体。
きっとリンを幸せにする男はこれから何度もリンを抱き締める。それは弟である俺には無い権利。
その事に異議を唱える資格もない。


「ごめんなさい。ごめんなさい……」

誰よりも好きだ。幸せになって欲しい。
それは嘘じゃないけど暫くは俺のものでいて。唯一だった宝物はもう壊れて、日常には戻れない。
報われないやり場のないこの思いは今日で終わりにしよう。リンが望むなら何処までだって堕ちていけるけど、彼女はそんな事望んじゃいないんだ。

後始末も無しにリンを腕の中に押し込めて、下がる目蓋に抵抗を諦めた。

大好きだよ、リン。 リンが親愛を語るならちゃんと愛情を騙るから。




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