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私、琴枝は自転車通学を始めました。
そりゃ〜もう、親にかなりねだりましたよ。

「あんた、電車じゃないとキツくないの?」

「……自転車じゃないと死んじゃうの!ホラ、私サイクリング選手になるから!」

と大嘘を付いてまで買った自転車だ。
今日からアレから逃げるために頑張るぞ、と琴枝は意気込んだ。

−−−数ヵ月後
琴枝は息を切らせながら自転車を全速力で漕いでいた。冷や汗が沢山流れている。

(何で……あれは何なのよ!)

琴枝が通学路を歩いていたりする時、他校の生徒が追い掛けて来るようになった。情報を掴んだのは調べたからである。

それを友人に話すと遠い目をし「……まぁ……頑張って下さい☆」とガッツポーズをされた。彼女曰く、片想いが重いだけですよ!


「琴枝――――!」

アレの声により現実に戻される。やはり、世界一足が速いと思われる学生だから勝ち目が無いことは知っている。
だが、嫌な予感しかしないから逃げたい。

「何故、私から逃げるぅうううう−−−!!」

「あ、貴方が、怖いか……え。」
「琴枝っ!!」

その時、自転車ががたつき、バランスを崩し、琴枝の身体は投げ出された。
自転車も過労というのがあったことを、琴枝に知らしめる。もし、この自転車が人間であったらバックレていたに違いない。

運が悪く、自転車から投げ出された場所は下り坂であった。だが、アレが−−三成が瞬時に琴枝を抱き締め、最悪の事態は免れた。
「大丈夫かっ!」
「…………ど、」

退いてよ、琴枝は抱き締めている三成の胸元を押し逃げようとする。
が、足が動かずにされるがままに病院に連れて行かれた。

その日以来、故意に琴枝を追い掛けなくなり、自転車は売り払った。せっかく友人と約束していたのに、自宅パーティーになってしまった。



「これで貴様らは死ななくて済む」
「……私は死にかけましたが。」
「只の打撲と擦り傷だろう。いつもの事だ。」



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