08
「アヤノ……」
俺は彼女の顔を見て黙る。
じっとアヤノはシンタローを見つめる。
「……」
「……分かった」
俺はアヤノを手を少し強く握る。
「落ちないように手を握る」
「シンタロー、ありがとう」
アヤノは手を繋いだままシンタローに抱きつき涙を流した。
浜辺は夕焼け空が美しい。
何処に居てもそうなのだが、今、俺たちはアヤノが『行きたい』と行っていた防波堤のような港と仕切りのような場所に座っている。
かなりの横幅があるため落ちないのだろうけど不安なので、あまり防波堤と地上の高さが無い場所に居るがそれでも高いと感じる。
浜辺を見ると海水浴場に行っている人達は徐々に減り、入れ替わりか新しい客が浅瀬で泳いでいる。
遠くを見れば山々が、そして、港の船が強くなっていく波に合わせゆらゆらと動く。中には準備をしている漁業関係者がいた。
「アヤノとここに来て良かったな」
「ね?綺麗だよね!」
「よし、アヤノ」
俺は遠くにある山を指差して
「あの山はなにか?そして、何県?」
少し弄ってみた。
あれから1年経つ少し前の夕焼け空が夜に変わる前。
また、世界は繰り返してしまう。
「ごめんね。シンタロー……。」
私はシンタローと繋いでいた手を離すかのようにあちら側の世界に行った。
……あの問題は答えられなかったな。
でも、それも良いや。好きなシンタローと夏を過ごせた。その事実が思い出が胸に焼き付いているのだから……
夕焼け空のキミにて。
(大切な思い出の小さな約束を忘れない)
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