07
アイスを食べながらアヤノが『あの堤防に行きたい!』と言い出し、一緒に行こうかと約束した。
しかし、ずっと海で遊んでいたため、日が落ちはじめ忘れかけた時となってしまった。
何とか堤防に行けるか。
そう思っていたのだが遠い。
アヤノが指差した場所は遠い……。
「流石に休もう」
「そうだね……」
近くを通り掛かった際に見つけたベンチに座ることにした。
ごめん、とため息混じりに呟くとシンタローが「ほら」とベンチまで手を引かれた。
「有り難う」
「〜〜〜〜!!」
そう言い微笑むアヤノが可愛すぎて萌えた。耳まで熱い……きっとこれは夏だからと言い聞かせる。
重なる手の温度がもっと心臓の鼓動を速くした。
こんなに、まだ学生なのに鼓動を速くして良いのだろうか?
いやいや、そういう事は置いといて……。よく分からない思考を巡らせながらベンチまで着く。
「……」
「……」
遠くの人々の騒ぎ声や波の声を聞きながら二人は黙り込んだ。
さっきまで笑い合っていたのはどこに行ったのか。
お互いに顔を背け、しかし、ケンカしている訳では無く耳まで真っ赤で手は繋いだままだった。
ふと、アヤノが声を掛けた。
「ねぇ、シンタロー?」
目は合わない。
恥ずかしさで。
「なんだよ。」
イラついている訳じゃない。
目を合わせなければ。
「私が落ちそうになっても……良いように」
アヤノは言葉を考えているのか。少し黙り込んだ。
「ずっと、ずっと手を繋いで良いかな?」
アヤノは悲しそうに嬉しそうな笑顔をしていた。
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