いろいろしょーせつ | ナノ
融合次元に居たときもそうだったが、スタンダード次元に来てからもセレナには休む暇なんて無かった。エクシーズ次元の残党を狩ろうと一人で動き回り眠る時でさえ警戒をしていた。
それが、自分と似た柚子と出会い彼女の口から真実を知った。だが、恩人である彼女は今、スタンダード次元にはいない……。

誰も私を責めなかった。
しかし、柚子の幼馴染みの遊矢の中では復讐の二文字が浮かんだ。これはきっと私のせいだ。

そんな事をぼんやりと考えていたら、赤馬零児がやって来た。手には赤い衣服。
「今着ている服は借り物なんだろう。これに着替えろ。」
そういえば、ずっと柚子の服のままだった。当分はこの服を借りたままかと覚悟をしていたからか心底安心した。好意を受け取ろう、そう思った。
その時、セレナ自身は気付いていない様だったが、セレナの表情が和らいだことを零児は少し嬉しく感じた。
「ありがとう、この服を頂く。……手を焼かせてしまいすまない。」

礼を述べ服を新しくし、ベッドに身を休めた。さすがはプロフェッサーの一人息子の会社だ。私がアカデミアに居たときのベッドに負けない位に気持ちが良い。そんな安心した一時の中でも、頭の片隅には柚子の顔が浮かんでいる。融合次元に柚子は囚われてしまったのか。それとも、違う次元に飛ばされたのか。せめて、囚われず逃げていけば良いのだが。いや、普通のベッドでもいいから眠れていれば良い。
(何を考えているんだ。)
セレナはため息を吐いた。

「セレナ、この戦争では甘いことを考えるな。セレナの実力はオシリスレッドだ、エクシーズ次元殲滅には足手まといになる。」
プロフェッサーからエクシーズ次元殲滅の部隊に入れせ貰えない理由を聞いた時を思い出した。
「私は……何も甘いことを考えていません。私はオベリスクフォースよるも勝ると今、ここで証明できる!誰か一番強い者を連れてこい!」
思わず、デュエルディスクを起動させ、絶対的な存在であるプロフェッサーに乱暴に反論した。力を込めた為かブレスレットが揺れる。
「自惚れるな。このアカデミアにはセレナよりも強いデュエリストが居ることを。」
「なら、ソイツを連れてこい!」
「まだ、出会うのは早い。」
そう言われた瞬間、出てきた監視役により両腕を掴まれ、自室にまた閉じ込められた。

セレナは嫌な事を思い出しながら、チクタク、チクタクと鳴る時計に耳を澄ました。

−−−
遊矢はまだ教室に帰ってこない。別室で補習を受けている。私は補習なんて受ける必要は無いからデッキ構築を考えながら遊矢を待つ。

遅いわね、と呟いた時に開いたドア。

「もう!遊矢は私をいつまでも待たせる気なの?!」
いつもの様にドアに向かう。あははって笑う遊矢が待っている……"待っていた"はずだった。
「やぁ、君が柚子?」
遊矢に似た姿、似た声の見知らぬ少年が立っていた。

夕焼け空はもう暗い空となり周りは見えない。柚子は必死に走りながら声を押し殺しながら遊矢を捜す。
(遊矢、どこなのよ!)
「待ってよ。なに?そんなに僕と鬼ごっこがしたいの?」
(誰なのよ……!)
少年が私に近づく足音が恐怖の音に聞こえる。静かに遠くに離れるが、もうすぐ追い付かれそうだ。
(このままじゃ……。)
苛立ちながら、しかし、恐怖に怯えながら目の前の扉を開いた。
眩しい光が射し込んだ先は……。


−−−
目覚まし時計が部屋に響きその音を止めるべく手を伸ばした。しかし、ガタッ!と鈍い音が響いたと思えば、時計が落ちていた。
「あ……。」
いつの間にか眠りについていた。時計を落とし続けたせいか針が止まっている。未だ、慣れない空間、次元だ。
『起きたか、セレナ』
タイミング良く零児から端末から電話が掛かってきた。
よく声が響くせいか部屋は無駄かと思うほど広く感じた。
「悪い夢を見た。」
『どういう意味だ?』
「そのままの意味だ。」

恩人である柚子の夢を見ただけだ。
まさかこんな風にして柚子が恐怖に怯え捕らえられていない事を祈った。
−−−
単なる夢落ちの話

H27-06-25 加筆修正



帰宅時間はまだ。
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